1.かつての勇者が持ち込んだ物
現在、「迷宮壊し」の方が暗礁に乗り上げているので、その間に二作目を書いていきます。
それでは宜しくお願いしますm(_ _)m
「おっちゃん! コレの本物作ってくれ!」
長い銀髪を後ろの下で束ね紫の瞳を持つ青年ガルは、かつて勇者召喚の際に流れてきたらしい傘というものを行商人から入手したので、複製と強化ができないか変わりもん鍛冶屋の見た目おっちゃんな男を尋ねた。
「おっちゃんって歳ではない! ってなんだその変な武器は?」
「傘っていう武器らしい。どうやら軽いし、剣先も潰れているから模擬戦用の武器なんだと思うが」
鍛冶屋のおっちゃんのように見える男、トールは興味深そうに渡された武器を弄る。
トールは、傘とやらの剣の柄のよう曲がった部分に着目すると、そこから伸びる細長い鉄の棒に何やら突起のようなものを見つけた。
「何だこれは」
「それ、押してみ」
ガルはニヤニヤとした表情を浮かべトールに促す。
実は既に何が起きるかを、彼は事前に試しているからだ。
そんなガルの表情を見て怪訝な顔を浮かべるが、トールの特殊武器への興味が不安に勝ったのか意を決して傘を下に向け小さな突起を押し込んだ。
その瞬間
──ガバッ
「うぽッ!?」
武器が何やら変形し、トールを腹部を襲う。
「アハハハハハ!! うぽッて!!」
トールの反応にガルは爆笑した。
そんな笑いなどいざ知らず、トールは今起きた現象に驚愕を覚えた。
「変わった細剣かと思ったら、一瞬で盾になっただと!?」
「ヤバイだろ?」
「あぁ、ヤバイな……」
剣が変形して盾になるなど前代未聞な事。
そんな現象を目の当たりにしたトールは、驚愕を交えた表情とともにガルへと問いかけた。
「仮に作ったとして、その武器をどうする?」
ガルはその問に歯を見せて笑顔で返答する。
「俺は今年から冒険者になる。そん時は、その武器で最強の頂に行くのさ」
その返答に、トールも歯を見せて大きく笑った。
「そいつはいい! 丁度高ランク冒険者の持ち込み素材がたんまりあるんだ。それで最高の傘とやらを作ってやる!!」
「そいつはありがたい! だが俺にそんな金はないぞ」
「ガハハッ!! そんなの気にせんで良い。長い銀髪髪を後ろで束ねた紫の瞳、服で隠しきれない細く見えるが逞しく引き締まった筋肉質の身体、主の名はガルであろう? 細剣技術は凄いと噂で聞いたことがあるる。 なら実力で名を馳せてくれ。そして我の名を広めてくれ。そうすれば見返りはとんでもないことになる」
そう笑いながら肩を叩いてくるトールに、ガルは感激を覚えた。
「助かるわおっちゃん!! その約束守るさッ!!」
「ちょ、髭を引っ張るのはやめんかガルよッ!! それにおっちゃんって歳じゃないと言っているであろう」
ちなみに友人のようにふざけ合っているが、彼らは初対面である。
それでも馬が合うのは見た目の年齢差はともかく実年齢は共に15歳であり、物好きという共通点があったからだろう。
何はともあれ今日より、この先二度と生み出すことの出来ないような武器が形となる準備を始まる。
ガルの持ち込みの本来であれば日用品であるはずのものが、ドワーフでおっちゃんに見える青年トールの手によって不思議な武器へと変貌する。
その名も傘。
それは武器ではない。
もう一度言う。
それは傘。
本来であれば雨を防ぐものであり、決して突き刺したり盾として扱ったりするような武器ではない。
ガルとトールの言う『傘の本物』とやらは、如何なるものなのか出来てみないと想像出来ない。
それが分かるのはもう少し後になりそうだ。
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まだ一話目なので期待はしてませんが
初めの1ヶ月はなるべく投稿できるよう努力します!