<20.情報入手>
「必ず殺ってみせるわ」
椎奈は、強い決意を口にした。
「まあまあ、今からそんなに入れ込まなくても。まだ早いよ」
茶留が軽く笑いながら、ノンビリと言う。
2人は前回と同じく、無人駐車場で会っている。
「それで、高原は確かに隔週の木曜、宗野町の三本指マンションに出向くのね」
椎奈は茶留の忠告など耳に入らない様子で、そう尋ねた。
「ああ、そこに愛人を囲っているんだ。お忍びだからということで、高原の指示でSPは付けないらしい。そりゃあ、隠れて愛人に会いに行くのに、SPを付けていたら目立つもんね。いつも運転手と2人だけで行くらしいよ」
「良くやったわ、お手柄よ、茶留」
「ホント、大変だったんだぜ、この情報を手に入れるのは」
茶留は、大げさに疲れた態度を表し、息を吐いてみせた。
「秘書の松岡を尾行して、官房長官の福間の行動も見張って、途中で見つかりそうになったりもしたんだぜ」
「へえ、そうなの」
椎奈は、まるで他人事だと言ったように、そっけない態度だ。
「おいおい、もう少しオイラに対して、ねぎらいの言葉があってもいいんじゃないの」
「それは大変だったわね」
セリフを棒読みするかのように、椎奈が言う。
「全く気持ちが入ってないじゃん」
茶留は不満そうだ。
「感謝してるわよ、本当に」
「そうは見えないけどなあ。君の頼みだから引き受けたけど、こんな個人的な仕事、普通はやらないよ。特別報酬を要求したいぐらいさ」
「じゃあ、何か欲しい物でもあったら、言ってごらんなさいよ。買ってあげるわ」
「本当かい?だったら、スクール水着とか」
茶留が、笑いながら言った。
「何よ、それ?」
椎奈が怪訝そうな顔をする。
「スクール水着だよ、知らないの?」
「知ってるわよ。だけど、使い道は何なのよ」
「それはプライベートなことだから」
「まさか、自分で使うわけじゃないでしょうね」
椎奈は、疑いの目を向けた。
「まさか。まあスクール水着のことは、別にいいよ。そのぐらい、その気になれば自分で買えるしね。特別報酬なんて、冗談だしさ」
「何よ、それ」
「それより、さんざん苦労して、ようやく手に入れた情報だ。ちゃんと生かしてくれよ」
「分かってるわよ。だから、言ってるじゃないの。必ず殺ってみせるって」
「あんまり熱くなりすぎて、失敗しないようにね。次に高原が三本指マンションに行くのは3日後だから、それまでにキッチリと準備をしてさ」
「分かってるわよ、そんなこと。こっちは殺しのプロなんだから」
椎奈は、少し怒ったように言った。




