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夜シフト

今日は、カラオケ『オハコ』の夜シフトに入ってます。


今日のバイト時間は午後6時から深夜0時までのシフトです。


夜は、昼と違って、スタッフも多いんです。

キッチンに三人、ホールに四人が、基本の人数です。


キッチンには、社員さんやベテランの方、飲食店経験者が入る事が多いです。

だから、私はまだキッチには入れません。

今夜はホールです。


ホールは、受付やレジ、注文を届けたり、部屋の用意や片付け、ドリンク作りがお仕事です。


「ロリエちゃん、仕事は慣れた?」《あだ名…定着してんなぁ……》


「あ、二見さん、そうですね、だいぶ慣れたと思いますよ」


二見ふたみ しんさんは、今日はホールに入ってて、サブチーフと呼ばれる役職の人です。

アルバイトのリーダーのようなものだと、薫子さんに聞きました。

ちなみに、サブチーフは二人います。


二見さんは、24歳で、大学生の頃から『オハコ』でバイトをしていて、

大学をを卒業してからも、ずっとここでバイトを続けています。

お仕事の事は、何を聞いても答えられるから、頼れる人なんです。


背が高く、髪を肩まで伸ばしパーマをかけた、少しだけチャラい感じ。

明るくてしっかりしてるけど、ちょっと感情的になりやすいらしく、

スタッフと揉める事もあるそうです。


「ロリエちゃんは、昼のシフトにも入ってるから、仕事もだいぶ覚えたでしょ」


「そうですね、ホールはなんとか覚えたと思います」


「店長と一緒だと、嫌でも仕事覚えないと、お店が回らないもんね」


「まぁ…そうですね…ハハ…」


「ところでさぁ……ロリエちゃん、大学の友達に可愛い子とかいない?」


「え?」


「いやぁ……友達に合コンを開いてくれって言われててさ、良い子を探してるんだけど…」


「ああ……どうだろう……」


ああ、困ったなぁ……二見さんは軽そうだからなぁ……


「ちょっと、新さん!ロリエに変な事を頼まないでよ」


あ、薫子さんだ!……助かったぁ……。


薫子さんは、私より一つだけ年上だけど、なんかもっと大人に見える。

スタイルは良いし、緩いウェーブのロングヘアーを無造作にくくった感じが、色気を醸してる。

柔らかい目の下にあるホクロが、チャームポイントだと思います。

しっかり者で、私の世話やいてくれるお姉さんのような人です。



「なんだよ、薫子。

 別に変な話はしてないから。

 ちょっと合コンをしようって……」


「それは、変な話に入るわ。

 ロリエは、うぶなんだから、弄ばないでね」


うぶって……恥ずいっス……。

ロリエも……恥ずいっす……。


「そうかなぁ……合コンくらい普通でしょ。

 あ、ってか薫子はどう?良い子いない?」


「いても、新さんには、紹介できないかなぁ?

 ちょっと、軽いもん」


薫子さん、ナイス。


「え〜、マジで?

 そんな事ないけどなぁ」


「そんな事あるよ、大学の先輩が新さんの事を知ってて、友達が遊ばれたって言って、恨んでたよ」


「う……だ…誰だろう……俺の事じゃないかも…だな……」


うろたえてますよ、二見さん。

胸に手を当てて、考えてください。


「さぁ、新さん…それより、このカシオレとカルアミルクを6号室にお願いしますね」


「……はい」


二見さんは、大人しくドリンクを部屋に持って行った。


「ロリエ、新さんに遠慮なんてせずに、嫌な事は嫌って言わなきゃダメよ」


「ありがとう、薫子さん」


「うん、例えばお客さんにも色々言われたりしても、簡単に連絡先とか教えちゃダメだからね」


「わ……わかってるよ、その位は……。私ももう直ぐ20歳になるんだから」


「そっか……ごめんごめん、私は、てっきりロリエが中学生だと思ってたわ」


「えぇ?……薫子さんまで、なんでそんな……」


「だって……」


薫子さんの目線が、私のかわいいオッパイに向いてる。


「ちょ……ちょっと!バカにしないでよぉ!

 今は控えめだけど、まだまだこれから伸びる子なんだから!プンプン!」


「はいはい。怒らないで、牛乳でも飲んで成長してくださいな」


薫子さんは、牛乳をグラスに入れて渡してくれる。

スタッフは、お酒以外の飲み物は無料で飲む事が許されている。

フードも、全て100円で食べられる。

貧乏学生の私や、フリーターの人達には、大変嬉しいサービスだ。

その上、休憩時の賄い料理などは、自分で作れば、練習として無料にしてもらえる。

その飲食の記録は、ちゃんと賄いノートに記入して、1日の終わりに、社員さんにサインをもらう事になっている。


私はキッチンにグラスを持って行き、スタッフ用のテーブルに寄りかかる。

牛乳を飲みながら、ぶーたれていると、キッチンの奥でフライパンを振っている人が、話しかけてくれた。


「なんだよ……ご機嫌ナナメだな、ロリエ。

 薫子にでもいじめられたか?」


「あっチーフ、そうなんですよ」


宮園みやぞの 九一きゅういちさん。

社員さんで、チーフという立場の人。

チーフとは、副店長のような役職らしいです。

このお店のNo2ですね。


料理が得意で、元々はどこかのカフェで料理を作っていたんですって。

痩せてて、目が大きく、少し怖そうな雰囲気。

でも、実際はすごく優しいです。

ただ、仕事には厳しいから、怒る事もしばしばあります。

このお店では、一番の大人な人だと思います。

年齢は、プル店長と同じくらいらしいけど、そう思うとなんかプルオ店長って人の重みのなさが、際立ちます。


「楓、なんてイジメられたんだ?」


「私のオッパイが……高校生みたいだって」


「クッククク……それは、ヒドいな」


「そうでしょ?私はまだ、10代なんだから、これからも成長するって言ってやりました!」


「そうだ、自分に自信を持つ事が、物事を良い方向にすすめるからな。

 その調子でいけ」


「はい!……って、あれ?……今日ってチーフはお休みじゃなかったんですか?」


「ああ、そうなんだけど、プルオが休みたいって言うから代わってやったんだ」


「え!?プルオ店長、どうかしたんですか?」


「あいつ、マンションの11階に住んでるんだけど、部屋を出てエレベーターに乗ったら、

 10、9、8階と、順番に全階で人が乗ってきたらしいんだ。

 それで1階に着いた時にはエレベーターに酔っちまって、気持ち悪くなったから、休みたいってさ」


……おお……クズいなぁ……。


「……チーフも、プルオ店長に甘いですね……」


「プルオには、なぜか不思議と甘くなってしまうんだよなぁ……ロリエにもわかるだろ?」


……悔しいけど、『はげどう』です!


「まぁいいさ。

 よし!じゃあ頑張るロリエに、後で俺がバストアップにつながる食材、豆腐とアボカドのサラダを作ってやるかな」


「えぇ!?ほんとですか!」


「ああ、その前にこの高菜雑魚チャーハンを、11号室に頼むよ」


「イエス・マイ・バスト」


「なんだそりゃ」


プルオ店長……日々成長する私を見てくださいね!




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