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目が覚めて


 ………


「……あら、目が覚めたみたいね。ちょっとまっててね」

 ガチャ、たったったったったっ、「あなたー!」


(……ここは……?)


 健司は寝惚け眼を動かす、どうやらベットに寝かされているようだ、体がまだあまり動かないが首を動かす。

 右を向くと暖炉がありパチパチと薪が燃えていた、状況を確認する為にまだ少し動くのが辛い体の上半身を起こす。

 古い家のようだが天井にはランタンが灯されていた、壁は木と煉瓦で出来ているようだ。

 絨毯も敷かれていて模様も緻密で決して安くはなさそうだった。

 正面には机がありその上には健司のビジネスバッグが置かれていた。


 健司は混乱していたが落ち着いて覚えていることを思い出していた。

 龍の尾の一撃で吹き飛ばされたのだ、そこから先が思い出せない。

 どうやらそこから生き延び、何らかの形で助けられたのなのだろう。

 荷物は体に背負う形で巻きつけていたから残っていたのだ。

 荷物の中身は諦めるしか無いだろうか、中身の惨状を想像しただけで確認したくない気分だった。

 胸ポケットの卵は無事のようだ、もしかするとこの卵のおかげで生き残ったのかもしれない。


 健司が状況を何となく理解してきたころ、扉の向こうから何人かの足音が聞こえてきた。


 コンコン「入るわね?」


 明らかに日本語では無かった、それなのに健司は自然と理解出来ている、健司は正直自分に驚いていた。


 最初に160cm前後で30歳半ばのスカーフを首に巻き、栗色の髪で長さは肩で揃えた高さの穏やかで優しそうな人相の女性が入ってきた。


 続いて170cm前後で30歳後半位で濃い茶色の髪型の美しく揃えた髭を蓄え、凛々しくも威厳のある眼差しでいながら口元はホッとする優しい笑顔の男性が入ってきた。


 更に続いて190cm前後で40歳前半位の厚着だがその上からでもわかる体格で間違いなく筋骨隆々、少し白髪が混じった黒髪の男性はとても楽しい事があったかの如く満面の笑みを浮かべて入ってきた。


 更に更に続いて165cm前後で50歳前後の恐らくは医者であろう人物が入ってきた、恰幅があり髪は全て剃っているようだ。髭もしっかり剃られて清潔感がある。薬箱と思しきものを携え、恐らくは聴診器と思われる物を首から下げていた。


 4人はそれほどに広くない部屋に、健司を気遣ってか、大きな音を立てぬよう静かに入室した。

 先ず、医者と思しき男が健司の前に椅子を寄せて座った。


「儂は医者だ、話す事は出来るかね?」


「…い、コホンッ!失礼、はい、大丈夫です。」

 かすれた声を咳払いする事で喉の調子を整える。


「少し状態を確認しよう、どこか痛いところは無いかね?」

 言いながら医者の男は両手を健司の顔に持って行き親指で眼の下を少しだけ下に引っ張る、瞳孔の白目の色や様子を確認している。


「大丈夫です、助けて頂いたようで、幸いにも痛いところはありません」


「口を大きく開けて、舌も少し出して色も見せて」

 健司は言われるまま従う、医者の男は確認した。


「上着を脱いでくれ、呼吸音と心音と触診で痛みや異常があるかないか確認しておこう。」


「わかりました」

 健司は上着を脱ぎ聴診器を、当ててもらう。細いラッパのような原始的な構造だが耳にあてる事で音は聞こえているようだ。

 確認を終えると、ベッドに、横になるように指示され、内臓を中心に何度か指で少し押し痛みがあるかどうか、異常があるかどうか、指を押しながらその都度確認した。

 内臓付近は特に問題が無い事を確認すると腕や足を少しづつ指で押して行き、骨折や捻挫、打撲による内出血や痛みが無いか全身を確認した。

 うつ伏せになるようにも指示され体の後ろ側も肋骨や関節も含めしっかりと確認された。


「ふむ……異常は無いようだ。どこも怪我をしていない。まだ気になる事は有るので儂は隅で話を聞かせてもらう事にさせてもらう。」


「そ、そ、そうですか…それは何よりです」

 威厳のある優しそうな男性が答えた。

 何となく、部屋の空気が驚愕の様子を隠せないでいる様子だった。


「あの、この度は助けて頂いて本当にありがとうございます。」

 健司は、深く重くお礼の言葉を述べた。


「いえいえ、気になさらないで下さい、あなたは五日間も眠っていたのですよ。どうかお気になさらずゆっくりしていってください。」

 威厳のありそうな男が答えた。


「そうだぜ、ウチのモンがお前さんを見つけた時は凄かったんだぜ、全身ズッタズタのバッキバキのグッシャグシャ、正直あんな状態で生きているのが不思議でしょうがなったぜ。わっはっはっはっは!!」

 筋骨隆々な男は威勢良く笑いながら、サラッととんでも無い事を言い出した。


「……ズタズタ?…バキバキ?…グシャグシャ?」

 健司は人間の体においてあり得てはいけない様子を想像した。


「儂もお前さんを見た時は絶対死んだと思ったわい」

 医者の男がその時の感想を答えた。

「しかし儂も医者の端くれだからの、生きている以上は手を尽くしてみるしかあるまい?

 しかしその時に面白い事に気がついての、お前さんの体が少しづつほんのわずかだが治癒されている事が判明した。」

 医者の男はいろいろな手を尽くして健司を治療してくれていたようだ。


「そうと決まれば話しが早いってモンよ!治癒の動力源が魔力である事までは判明した、早速ウチのモンで魔力が優れているやつを集めて魔力をお前さんの体に注入してみたわけだ、結果はご覧の通りと言う訳だ」

 筋骨隆々の男は楽しそうに話した。


「あぁ、すまない、自己紹介がまだでしたね。私は一応このフリージア村の長をさせて頂いているグリーフと申します。そしてこちらが私の妻のエレノアです。」

「よろしくお願い致しますね。」

 威厳のある村長のグリーフと、スカーフを巻いた優しそうな村長の妻エレノアが揃って自己紹介を始める。


「オレはフリージア村の冒険者組合(ギルド)のギルドマスターをしているブランドルだ、よろしくな!」

 筋骨隆々な男ブランドルはギルドマスターらしい。


「儂が医者なのはもうわかっておるな?フロンストと言う名前じゃわい、何かあったら儂の所に来るといい。」

 医者の男フロンストは部屋の隅の椅子に腰掛けて自己紹介をした。


「私は井頭健司(いとうけんじ)と言います、ケンジとお呼びください、この度は助けて頂いて本当にありがとうございます、どうぞよろしくお願い致します。」

 健司は、もといケンジは、可能な限り失礼の無いように自己紹介をした。


 全員の自己紹介が終わったところで村長のグリーフが話を続けた。

「それではケンジさん、あなたには不可解な点が幾つか有るのですが質問させて頂いてもよろしいでしょうか?」


「はい、何なりとお答え致します。私もお伺いさせて頂きたい事が沢山ありまして、是非ともお話しさせて下さい。」


「そうですか、それでは…」


 ぐぐぐぅぅぅう〜〜〜〜〜ギュルルルルぐぐおぉおぅうう〜〜〜!!


「………まぁ細かい話しは明日にしましょう、とりあえず今日は食事をとって休んでもらいましょう」

「お食事をご用意致しますね」

 村長のグリーフと村長の妻のエレノアはにっこりと微笑んだ。


 ケンジは顔を真っ赤にしつつも、

「す、すみません。二週間くらいお湯くらいしか飲んでなくて、どうかお願い致します。」

 と答えた。


「二週間!?お前さん無茶したなぁ!わっはっはっ!」

 ギルドマスターのブランドルはケンジ背中をバンバン叩いて大笑いしている。ケンジはそれだけで頭がフラフラしてしまうのだった。


「奥様、恐らくはケンジさんは胃が弱っているはずだ、あまり刺激の強いものを食べさせると戻してしまうだろう。ひとまず柔らかい具材のみの薄味のスープで胃を慣らして行かなければなるまい。」

 医者のフロンストは村長の妻にアドバイスした。


「ありがとうございます!どうかよろしくお願い致します。」


 話の続きは、翌日の昼という事で解散となった。


 ケンジは食事になるまで何度もお腹を大きく鳴らしてしまい恥ずかしくて俯いてしまうのであった。


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