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衝撃的な遭遇

 

 ―7日目


 ぐぅぅぅー……


 酷い空腹と大きなお腹の音で目が覚めた。

 今は晴れているが、吹雪は寝ている間も強く吹雪いていた。

 幸いにも、卵の不思議な力のおかげで健司の周りは雪が積もっていない。

 それどころか、健司の周りだけ草が沢山生えていた。


 寝ている間に健司の体は疲れがすっかり取れていた。

 空腹は川の温水を飲んで耐え忍んだ、未だろくに食べれずに居る、自分の体の状態を健司は確認した。

 体が少しやつれて来ているようだった、不思議な卵は健司の体から疲労や怪我を少しづつ取り除いてくれる物ではあるようだ、だがそもそも食事による栄養は取らなければ徐々に体は弱っていく事に変わりは無いようだった。


 健司が元気よく行動出来るのは、卵の影響があってこそ成り立つものである事を否応にも理解した。

 卵が無ければ今頃、空腹と筋肉痛でまともな速度で歩く事は出来なかったはすだ。


 健司は川下りを再開した。


 卵のバリアと言うべきがフィールドと言うべきか、その影響範囲は健司の胸ポケットを中心に半径2メートル位のようだ。

 雪壁に走って体当たりしようにも健司は雪に触れる事が出来ない。

 健司の通った場所だけ丸く雪が削れて、穴が開いていく。

 雪壁の高さは3メートル強もあって雪壁に向かって歩くと雪のトンネルが出来る、しかし壁が高すぎて結局何も見えなくなってしまう。

 結局歩き易くはなったものの、前が見渡せる川辺を歩くしかなかった。


 ………………………


 …………………………………………


 なんか居る…


 前方の川の真ん中に大きな何かが川に浸かって丸くなっていた。

 遠目に見てもかなりでかい、巨大なトカゲのようなそれは明らかに生きていた。

 健司は生きた心地がしなかった、体調は20メートルを超えているだろう、川の真ん中に小山が寝ているようなものだった。

 近寄る事さえ躊躇われる、あんな巨大な生物に遭遇して生きて帰れるわけが無いのだ。

 距離は100メートル、小山の嗅覚は、聴覚は、どれくらいの物なのか、どこまでいったら捕捉されるのか。

 捕捉されたが最後だと思ったほうがいい。

 健司は川を大きく逸れるようにしてやり過ごす事にした。

 健司は川から離れるように雪壁を溶かしつつ突き進んだ、ひとまず川から100メートルほど離れる。

 そして川と平行に歩く、雪壁を進むと突然木が見えるので走って移動出来ない。

 焦る気持ちを抑えつつ歩く、200メートル以上超えたところで川の歩く方向に歩く、健司の視界は空と雪壁しか見えず、不安でしょうがなかった。


 ようやく雪壁を突破した、川に戻ったのだ、すでに後ろにあるはずの小山のような生物は遥か後ろに居た。

 ほっ、と胸をなでおろし川下りを再開しようと正面を向いた。


 先ほどより一回り小さい小山が三体佇んでいた。

 健司は巨大なトカゲのような生物と認識していたが、それは誤りである、おとぎ話やゲームに出てくる生物である事は明らかだった。


 健司の目の前にはドラゴンの子供が三体居たのだった。


 子供でも健司よりはるかに大きく、象の三倍の様相を呈する体格をしていた。


 一体が健司を捕捉し、全身にまるで電撃が走ったかのような凄まじい大咆哮を健司の目の前で放った。


「ウオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 鼓膜が破れてしまうのでは無いか、全身を爆音が突き抜けていく、音の衝撃波は健司の全身を凄まじい勢いでビリビリと揺さぶった。

 音だけで全身がバラバラに分解されてしまうような心境だった。


 この、咆哮により他の子龍と親龍が一斉に何事かとこちらを注目した。

 そして、すぐに理解した、静かな眠りを妨げる存在を。

 健司は恐怖で動けなかった、親龍と子龍に挟まれる形で。


 親龍が健司を睨み付ける、健司は尚も何も考える事が出来ない、恐怖でぼーっと眺める事しか出来ない。

 親龍が大きく息を吸い込む、首を大きく反らせていく…


 このままでは、大咆哮が来る!


 この瞬間に健司は冷静になった。

 こんな所に居ては間違い無く生きている事は出来ない!

 あの全身を突き抜ける大咆哮をもう一度食らって立って居られるとは思えない。

 震える足を叩き、全身の力を振り絞る、健司は全速力で走り出した、子龍の横を駆け抜ける!


「————————————っ!!—————————ぐっ、くうう!!」


 全速力で川を駆け抜ける、反応の遅れた子龍は驚いて方向転換する。

 遅れて親龍の大咆哮が炸裂する。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 この距離でもビリビリと肌が震える、全身の内臓がひっくり返る気分だったが、足を止めるわけにはいかない。

 このまま見晴らしの良い川を駆け抜けてもすぐに追いつかれてしまう、健司は雪壁に突入した。

 卵の力で雪がかき分けられる、すぐ視界が悪くなる、時々雪に埋まってきた木々が行く手を邪魔するがすぐに方向を切り替える。


 遅れて親龍が雪壁にぶつかる、勢いがそがれるがまるでブルドーザーのごとく雪を押しのけていく。

 健司はジグザグに全速力で走る、川の方角は忘れないように意識はしておく。

 駆け抜けていくと視界が一瞬晴れた、段差の多い坂道だった。


 怖いとか言ってる場合じゃない!


 坂を飛び跳ねるように駆け下りる、雪の上に着地…………出来ない!!

 雪をかき分ける力が裏目に出てる、雪の下の地面に着地、衝撃を吸収出来ずに地面に転がる、

 痛みはこの際考えない、すぐに起き上がりまた走り出す、すぐ後ろではブルドーザーが追いかけてきている。

 木があろうと無かろうと関係ないと言わんばかりにこちらを追いかけてくる。


 すると親龍が突然一瞬止まった、すると勢いよく一瞬右を向いた、そのまま後ろを向く、くるっと回っているのだ。


「ヤバイ!!!!!!!!!!」


 龍がその巨体を回転させるということ、それはつまりそのあとに凄まじい勢いで尾が飛んでくると言う事だ。


 ドドドドドドドドドド!!!!!!


 凄まじい地響きと爆発音のような音が聞こえた、健司は辛うじてムチの如く、またはゴルフクラブの如く振るわれた尾の衝撃に巻き込まれずに済んだかに見えた。

 しかし実際はあたりの雪と木を吹き飛ばしただけでは済まない、衝撃波と凄まじい突風が健司を吹き飛ばした。


 吹き飛ばされた先は崖になっており、健司はそのまま意識を手放したのだった。


 

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