雪に沈むその時まで。
泣くな、泣くな、泣くな、世界の母よ。
貴女の涙で、世界を沈めるな。
恨むな、恨むな、恨むな、創造神よ。
憎しみで、愛した子を殺すな。
怒るな、怒るな、怒るな、親友よ。
私は、こうなるとわかっていたのだから…
彼は、泣くなといった。だから、泣かない。
彼は、恨むなといった。だから、心を凍らす。
彼は、怒るなといった。だから、ここに雪を降らす。
人間は、雪が降り始めたのをみて、笑って去った。
私が、彼を処すると思ったのだろう。それは正解だ。
私が、彼を裁くとも思ったのだろう。それは間違いだ。
私が降らす雪が、彼を覆い隠してゆく。
ゆっくり、ゆっくりと、黒い彼が白に沈んでゆく。
それを見ていると「○○」と、妹が側に来た。
「■□、後は頼みましたよ」と、私は妹に後を託す。
私は、泣かない。だから、世界は沈まない。
私は、恨まない。だから、子を愛さない。
私は、怒らない。だから、私は去る。
「ごめんね」と笑って、私は首にかけていた首飾りを妹に渡す
「さようなら、姉さん」と妹が受け取って笑う。
兄さんは逝った。姉さんは去った。
託された僕はどうするべきなんだろうと、苦笑する。
僕は、兄さんほど甘くない。姉さんほど優しくない。
現に、世界中で宴会が行われてるのをみて、滅ぼしてしまおうかと思ってる。
けど、僕はしない。兄さんが遺して姉さんが託したものだから。
兄さんが眠る地の天候を、雪に固定する。そして、それ以外の世界の天候の制御を放棄する。
今世界にある力が、ゆっくり兄さんの死んだ地に集まるようにして、世界への力の供給を止める。
後は神託で「世界は人に託す。われは見守る」という意思を流せば終わりだ。
僕は滅ぼさない、壊さない。けれども、君達が滅ぼそうと、壊そうと興味が無い。
滅びるなら滅びてしまえ、壊れるなら、壊れてしまえ。
姉さんが残した白に、沈んでしまえ。
昔、心優しい女神さまがおりました。
世界を創ったその女神様は、温かく世界を育んでいました。
ある日、黒い神様が世界に降りてきました。
その神さまは、悪い神様で、人々を恐怖に陥れました。
あるひ、白くて綺麗な男の子が生まれました。
女神様の色は白です。
人々は、その男の子は女神様の使いだと思いました。
お使い様お使い様と育てられた男の子はすくすく育ち、綺麗な青年になりました。
悪い神様を倒してほしいと願われた男の子は、悪い神様を倒しにいきました。
青年がやってくると、悪い神様は、笑いました。
それを見た青年は、一息に悪い神様を切って捨てました。
そのときです、空から雪が降ってきたのは。
それは、女神様からの祝福でした。
悪い神様の死によって、世界は救われたのです。
人々は、喜び、それを祝いました。
救われてはじめて迎える新年、神官たちが女神様からの神託を賜りました。
子である私達の独り立ちを祝福し、これからは手を出さずに見守る内容でした。
そうして、世界は私達人間に託されたのです。
はらはらはら、そこには雪が降っている。
黒い神様が眠る地は、白で染まっている。
白一色のその光景は、綺麗。だけれども、命を感じない。
人が聖地と呼ぶそこは、死者の地。
降り続ける雪は、終わった世界を白に染める日を待っている。