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Paranoia  作者: ほづみ
2/2

You

 誰かの目があると言いたいことがありそうなのにそれを飲み込んで、変な笑みを浮かべてただ頷く。けれど人に見られていないところでは、誰にも気付かれないようなことや頼まれ事を一生懸命こなして、時折優しげな笑顔を浮かべる。そんな生き物を発見した。


「そーゆー生き方、窮屈じゃない?」


 ボクには自分を気にするような家族もいなければ、友人、知り合いすらいない。だから思ったことは思った通りに行動するし、何を言われようが知ったこっちゃなかった。けど、他の人はそうでもないらしい。ボクの放った言葉に彼は泣きそうな顔をして、相変わらず奇妙な笑顔を浮かべていた。


「そうかもしれないね」


 そんな顔を見たかったわけじゃない。いつかの彼が一人のときに見せた、もっとほわっとした、温かくなるような笑顔が見たかった。彼に執着し始めたのは、多分それがきっかけ。


 それまで接点らしい接点なんてなかったが、構わずちょっかいをかけるようになった。最初は当たり前だが距離を置かれていた。それでも気にせず構い倒していたら、そのうち「仕方ないなぁ」と言って、無防備な笑顔を見せるようになった。そのときようやくボクは、何故こんなにも彼に執着していたのか自覚した。一目惚れ、なんて綺麗なものじゃないけれど、多分それと似た気持ち。


 彼の手を引いて、いろんなことをした。周りには何か言われていたかもしれないが、そんなの関係ない。今まで満たされなかったものが満たされて、彼がいれば怖いものなんてなかった。


 それがいけなかったのかもしれない。


 夏、とても暑い日。学校からの帰り道、ボクらは寄り道をして帰ることになった。近所の神社で夏祭りをしていたからだ。大して美味しくもないりんご飴をかじりたい、と話している最中のこと。


 隣で歩いていた彼が突然走り出した。ボクは一瞬頭にハテナを浮かべて、次の瞬間事態を把握する。彼の向かう先は道路で、そこには幼子がいた。そして少し先にはトラック。ボクも駆け出してはみたものの、間に合う気はしなかった。


――きっと、この手は届かない。


 それでも走り続けたのは、行動しなければ永遠に失ってしまう恐怖に耐えられなかったからだ。ボクが追い付くまであと少し。彼が小さな体を抱きしめたときには、もう避けようのない距離に車体が迫っていた。無我夢中で彼の元へ駆ける。頭の中は真っ白で、追い付かなければという思いだけで動いていた。


 そして、ほんの少しだけボクは間に合った。


 彼との距離が0になった瞬間、ボクは走ってきた勢いのまま、力の限り彼を突き飛ばした。彼は目を見開く。けれどついにボクと視線が交じることはなかった。


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