君のもとへ
早くいかなければ。
僕は走っている。
早く助けなければ君を。
目的の場所はわかっている。
行き方もわかっていた。
だけど僕はこのときまで走っていなかった。
行かなければならないとわかっていた。
僕は臆病だった。卑怯だった。
君が大事だとわかっていたのに。
しかし、今は走っている。
僕は町中を駆け抜けてゆく。
鬱蒼と茂った森が見える。
僕は気にせず走っていく。
建物が見えた。扉に手をかける。鍵が掛かっている。
鍵はぐらついている。
壊せそうだ。
僕は勢いをつけて体当たりをした。
ドアが壊れ、中に倒れこんだ。
そこには君がいた。
僕は走ってきた。無我夢中で走ってきた。
君がほほ笑む。
その笑顔ですべてが始まる。