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妊娠した  作者: 32
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発覚

 なんだか昨日から具合が悪かったので、おまじないのように持っていた妊娠検査薬を使ったら、妊娠した。会社のトイレで。

 今年大学を卒業した、24歳試用社員。本当にどうしようもない状況で、ますますどうしようもない方向に進んでしまったかもしれない。だって24歳にもなって、会社でのあだ名が”お嬢”。


 とりあえず今一緒に住んでいる彼にメール。

「緊急!取り急ぎメールして!!」

……いやいや、今は忙しいときか。

「手がすいたら電話して。お願い(>_<)」

……送信。


送信してから気づく、妊娠を知ったときの表情ですべてがわかるんじゃないのか。

つづけて送信、

「やっぱなんでもない、ごめん」


 失敗した。今は12時だから飲食店の彼氏は稼ぎ時、でもこれじゃ2時ごろ電話してくる。

まあ、いいか、今はそんなことはどうでもいい。とりあえず震えで仕事が手につかない。


最近、西原理恵子のまいにちかあさんを読んで、子どもが欲しいとは思っていた。さっきまで妊娠のHPを見ていた。彼氏が浮気性だから。

今になればすべてが兆候のような気がする。

さてどうするかどうするかってか、どうしよう。

悪いけどいきなり、うれしい、とか思えない。子どもには悪いが。でも困っているわけでもない。


 おろす気はない。

一人でも育てられる。というほど私は自立していないが、彼氏がびびったり、離婚したりしたら、実家で暮らそう。結局どれだけバカ娘でも私を無償で愛してくれるのは親だ。私にそれをわからせてくれたのは親だし、その親に育てられている以上、何がおきても子どもを愛していく自信はある。


少し落ち着いてきた。私は一人で弱い。年をとるのが嫌だし、いつ死ぬべきかをいつも考えていた。

変わる。

あーあ、早死にできなくなっちゃった、と微笑んで、自分がどれだけ傷ついても守ろうと心に決める。

涙が出るほど怖いけど、ああ、これは武者震いなんだな、と思う。


彼は”いきぬき”で他の女の子に会おうとする。

出会いサイトを利用している様なので、違う女の子のふりをしてメールを送った。

彼が求めているのは”秘密の関係”。

私は私のままで、メールの癖などが出ないようにしながらメール。

「彼氏がなんだか浮気しているみたいなの」

「私はそれに気づいて、彼氏にいったけど、もちろん彼氏はごまかすだけ」

「私はノイローゼ寸前でないているのに、彼氏にはどうでもいいみたい」

心の声だ。


「なんで、一番大切な人が許さなくてはいけない様なことをするの?」

「きっと彼はキミに甘えちゃってるんだよ」

「あなたはなんで?」

「気分転換だよ」

「でも私はもうぼろぼろなんだよ」

「俺だったら彼女がそうなっていたら尽くしたりするな」

「でも私はもういいの、私も遊んでやるんだ」


ちょっと面倒くさいけどやれそうな女を演出。

彼は喜んで本当の私にメールを送らずに、オンラインの私にメールを送る。私の顔を加工して写メをつくり送ったが気づかず。


結局、仲良くなって遊びに行こうと言う事になり、待ち合わせ場所でとっちめてやろうと思った。

彼が新宿とか池袋とかで遊ぶことを提案したので、(この場所自体目的がみえみえで嫌だし)そんなのつまらなさそう、と言ったら九十九里の海に行こう、と言い出したのでばかばかしくなってやめた。

彼は日曜日は1日中寝ていて、スーパーさえも一緒に行かない。


ちょっと彼の携帯に細工。メールが私に転送されるように設定。浮気の証拠が欲しかった。

万が一その画面を見てもばれないよう謎のフリーメールへ送り、その後自分のアドレスに転送した。

出会い系は毎日のように、たまに一気に私と付き合う前の彼女だのセフレだのにメールを送っているようだ。


私はすっかり鬱状態になる。誠実でない彼氏が許せない。でも考えれば私もぜんぜん誠実じゃない。

見なければ、彼氏は私を大切にしていることになる。

どうしようもなく寂しくなるときがあることなんてわかるし、遊びたい気分もわかる。

闇の部分を覗き見して、知らない振りをしている私の手も充分真っ黒だ。


一切信じられないのに別れられない。原因をいろいろ考えるが結局は好きなのだろう。

彼は私を理解しない、つらいだけだろうと思うのだけど。


今は平気。私は幸せに向かって突き進まなければいけなくなったから。

彼氏がどんな選択をしても、大丈夫だ。

自分が我慢していればいい、そんな生き方、子どもに見せられない。

強く明るくしなやかに、生きていかなくては。

別れてもお金もらえるしね。


さあ、電話がきた。

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