6話 4人の騎士団
「ベルムの無事帰還を祝してカンパーイ!」
「「カンパーイ!!」」
自分は椅子に腰をかけてテーブル上のグラスに注がれたオレンジ色の液体でベルムの騎士団のセインさんと金髪の女性と緑色の髪の男性と乾杯を交わした。謎のオレンジ色の液体は甘味があってとても飲みやすかったため半分くらいも飲んでしまった。
「プハー!やっぱりこれはから苦くてうまいな〜。」
(苦い?こんなに甘いのに・・・・同じ飲み物だよな?それともベルムの味覚が本当の味で自分の味覚は狂っているということなのか?)
こちらが勝手な想像で頭を悩ませていたら、セインさんが話かけてきた。
「さてと悠くんだったかな?ベルムから詳しい話は聞かせて貰った。改めてお礼を言わせてもらう。ありがとう。」
「いえいえいえ。こちらこそベルムがあの場にいなかったら、私も背後からやられていたのでお礼などとんでもないですよ。」
自分がそう答えるとベルムから向けられている視線に気がついた。ベルムを見ると手でgoodと表しながら笑みを浮かべていた。
「そうかい?君がそう言うのであればいいんだが・・・・。」
笑みを浮かべているベルムをセインさんが睨みつけると視線に気づいたベルムはロボットのような動きで当初の姿勢に戻った。
「君がそう言うのであればいいんだが、それではわれわれ3人の怒りがおさまらないため、後日にお仕置きすることにしたいのだがいいかな。」
この考えに対して金髪の女性と緑髪の男性も賛成と答えた。
後日お仕置き予定のベルムは最後の望みをかけて自分に目からキラキラ光線を浴びせてきた。この言動に気づいたセインさんは自分に言った。
「なお、悠くんがこれの中止を求めるのであれば悠くんも一緒にお仕置きを受けて貰うからね。」と悪い笑みを浮かべて言い放った。
この言葉によって自分が選べる選択肢は『賛成と言い、ベルムの醜態を楽しそうに見る』か『反対と言い、ベルムとともに醜態を晒す』のどちらかだったがその割合は99:1であった。
「さ、賛成させていただきます。」
この時、何かが崩れる音が聞こえた気がした。
「そうかそうか賛成してくれるか。じゃあ、ベルムはお仕置き決定!」
ベルムが頭を抱えながらブツブツ呟いているのをスルーしながらセインさんは話しはじめる。
(ベルムよ、すまない。君のことは忘れないよ。)
「お!今思うと自己紹介がまだだったな。私の名はセインだ。年は22。この隊の副隊長をやっている。呼び方は自由で構わないぞ。」
セインさんの自己紹介のあとに金髪の女性と緑髪の男性の自己紹介が続く。
「私はアリア。年はナイショよ。呼び方はアリアさんかお姉さんって呼んでくれると嬉しいな。」
「私はカルロ。年は19。呼び方は呼び捨てでいいよ。よろしく。」
「この4人がメンバー全員だよ。よろしく。」
「よろしくお願いします。って、ええっ!騎士団なのにたったこれしかいないんですか?」
「ああ、そうだが。悠くんはベルムから何も聞いていないのかい?」
「はい、何も。」
セインさんはベルムを再び睨みつけ、大きく溜め息をついた。
「我々は騎士団なんだが騎士団じゃないんだよ。」
・・・・・はい??
「分かり易く説明すると我々は王都第四聖騎士団に属しているが我々はその中でも少ない人数で騎士団本隊が扱うことができない任務を遂行する小隊なんだ。」
「へぇ〜。でもそんな大事なことを自分に伝えていいのですか?」
「君はベルムが友達と認めた人だからさ。」
「あーなるほどそういえばそうだったな。」
「理由を理解したようだね。君の言うとおりにこのことは知られてはいけないことだから他の人にはこのことを漏らさないでもらいたい。」
「わかりました。」
「ところで悠くん。悠くんは旅人だと聞いたのだけどこれから行く場所は決まっているのかい?」
(あー何も考えていないや。ここは正直に。)
「いえ、まだ特に決まっていませんよ。」
「そうか。ならば我々と一緒に来ないか?」
・・・・・え?・・なにこの展開?
この言葉はアリアも予想していなかったのか大きく反論し、カルロはそれを止めた。
「セイン!あんた、何も関係ない民間人を任務に巻き込んでどうするつもりなの!何かあってからじゃ遅いのよ!」
「まあまあ、アリア。落ち着きなよ。きっと副隊長にも何か考えがあるんだから、ですよね副隊長?」
「もちろんだよカルロ。まず理由1、先ほどベルムから聞いた話では森の中でグラニクスに遭遇した際に無傷でそれも1人でグラニクスを倒したらしいからだ。」
ここでカルロはセインの言った言葉の妙な点に気がついた。
「あの〜。倒した『らしい』とはどういうことですか?隊長は悠さんと同行していたんですよね?」
「同行していたことは同行していたんだが戦闘中にグラニクスに不意をつかれて気絶をしてしまって、肝心の倒したところを見ていないらしいんだ。」
聞いたカルロとアリアは額に手をあてた。
「確かに本当に倒したかどうかはわからないけど自分が見たところ彼はとても普通の人とは思えないほどの魔力を持っているから正しいと思う。それに我々は人数が少ないんだ。4人よりも5人の方が心強いだろ?」
「わかりました。副隊長がそこまで言うんでしたら、私も賛成します。アリアもいいよね?」
「わかったわよ。でも何かあっても知らないからね。」
「大丈夫だ。私に任せなさい。どうだろう?悠くん。」
(うーん、どうするか。行くところがないというのも事実だ。そして自分はこの世界のことを全く知らない素人であるわけだからベルム達に守ってもらうことができる。
自分にあるメリットは安全に他の国に行けて、この世界の情報収集&ベルム達の任務を共に遂行による戦闘経験の蓄積が見込められるな。)
「では私もその任務に参加します。」
「そうか!じゃあ、出発は2日後の夜明けの刻に王都の入り口にて集合だ。長旅になるから準備を怠るなよ。わかったか?ベルム。」
セインさんに呼ばれたベルムは最初はぼーっとしていたがセインさんから放たれた眼光で猫のように飛び上がって返答した。
「お、おう。わかった。悠、じゃあ明日一緒に武器屋とか行こうぜ。」
「ああ、そうだなぁ。ふあぁぁ。なんか眠いな。そぅ・・いえば自分はどこにぃ寝れば・・。」
ここで自分の意識は途切れた。この後、ベルム達が悠を運ぶのに苦労したことは言うまでもない。
新しく登場したセイン、アリア、カルロはベルムの同じように活動報告で詳しく説明します。