5話 王都と再開
山小屋を出てから数十分、自分たちは森を抜けて王都への道を進んでいた。ケツの痛さはまだあるが乗り物酔いは風を切る心地よさにより、和らいでいるため前より動きやすいと感じていると遠くに壁と思わしきものが見えた。
「おい、ベルム。あの壁のようなものは何だ?あれが王都なのか?」
「ああ、そうだ。あれが王都だ。そしてあのユウが壁と言ったものは王都の防壁だ。」
防壁の目の前まで来てみるとその大きさに驚いた。防壁は現実世界の凱旋門程の高さをしていて、長さは王都の門から見てもその端が地平線の先に消えており、中国の万里の長城を見ているかのように思えた。
「大きいなー。流石は王がいる国なだけあるなー。」
「そりゃあ、そうさ。王がいるのに防壁がなかったら、いくら俺たち騎士団強かろうと突然敵襲に遭ったら直ぐに陥落してしまうかもしれない。」
「ふぅん。」
「わかったら王都に入るぞ。」
「わかった。じゃあ、行くか。」
そう言うとベルムは門の左側にいた兵士に声をかけた。
「おーい、王都に入りたいんだけど大丈夫か?」
その呼びかけに一人の兵士が応じた。
「あなたはベルム殿!ご無事だったのですか?長く戻られないために皆さんどれほど心配なされたか。」
「ああ、分かってる分かってる。見てのとおりに俺はピンピンしているから心配するなって。それはそうとして入っても大丈夫か?」
「はい!ベルム殿は問題なしなのですが・・・・そちらはお連れの方ですか?」
「ああ、そうだ。こいつは俺の・・そうだな友達といったところだな。」
「そうですか。ベルム殿のお知り合いでしたら安心です。どうぞ、中へ。」
(今の兵士の対応と周りの人間に大きく心配されていることから見て、もしかしたらベルムは凄い人なのかもしれないな。)
王都に入ると中は活気に溢れていた。市場は商人たちが店を構え、人々がものを買うという当たり前のことであったが双方が眩しいほどの笑顔で接しているのはただ単に仲がいいというだけではない気がした。
これがこの国の王の力なのだろうか?と思っているとベルムが声をかけてきた。
「おい、ユウ。」
「ん?ああ、何だ?」
「大丈夫か?何か考えていたみたいだが。」
「いや、何でもないさ。で、何だ?用があったから話しかけたんだろう?」
「今から俺の仲間の騎士団のところに行こうと思ってな。この王都のことも説明しないとならないしな。どうだ、行くか?」
「ああ、行かせてもらう。」
騎士団の仲間はたぶんこの時間はいつも行きつけの酒場にいるらしく、自分たちは酒場へと足を進めた。歩き出してしばらくすると剣が交わるマークのついた建物が見えた。
「おい、ベルム。この建物何だ?武器屋か?」
「ああ、ここか?ここはギルドだな。」
「ギルド?」
「そうだ。ギルドというのは人々がら依頼されたことを報酬と引き換えに引き受ける集団のことだ。そのなかでもここは傭兵ギルドで魔物などの討伐などを主に仕事とする強い戦士たちが集まる場所だな。ギルドといえば他にも魔術師ギルドや商人ギルドなど多種多様だ。」
「ほう、ギルドか。」
「まあ、ユウはこのギルドとは一生無縁だと思うぞ。」
「そうだな。」
その後もベルムと共に王都を巡り、例の酒場に着いたのは火のごとく朱く燃える空が海のごとく蒼き夜に包まれ始めているころだった。
「すっかり遅くなってしまったな。」
「私のためにすまないな。」
「気にするなって。俺が案内してやるって言ったんだから、気にするなって。」
「そうか。ならいいんだが。なぁ、ベルム。」
「何だ?」
「話は変わるんだがベルムの仲間の騎士団って、どんな奴らなんだ?少し気になってな。」
「なんだそんなことか。そうだな〜、簡単に説明すれば面白いやつばかりだな。」
「面白い?」
「ああ。だが今の俺のいない環境で大丈夫なのかが心配だな。あいつらは俺がいないとダメな奴らだからな。」
「だがそんなにも面白いメンバーなら大丈夫なんじゃないか?」
「大体は大丈夫なんだがただ一人副隊長のセインがな…。」
「副隊長ほどの人なら大丈夫さ、心配するなよ。」
「そうだといいんだけどな。じゃあ、そろそろ酒場に入るか?」
そういうとベルムと自分は酒場の入り口をくぐった。
視点 セイン
「ああぁ、どうしよう。ベルムがいなくなるなんてそれも今の時期によりによって、あの森で。」
「まあまあ、セイン副隊長、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。」
「そうですよ。きっと隊長ならひょっこり帰ってきますよ。」
「はは、心配しなくても大丈夫なんて思えるはずがないだろうが!!じゃあ、アリアとカルロは心配じゃないというのか?」
「あのベルム隊長ですからきっと大丈夫ですよ。」
「アリア、私はあのベルムだから心配なんだ!」
「でもセインさんは心配し過ぎです。もう1日中こんな感じじゃないですか少しは水でも飲んで落ち着きましょう。はい、水です。」
「ああ、そうだな。ありがとう、カルロ。はぁ、ベルム早く帰って来ないかな。私がおかしくなりそうだ。」
悠 視点
自分らが中に入ると中は冒険者や魔術師、商人に兵士まで年齢差や性別に関係なく、カウンターやテーブルで酒を飲んで盛り上がっていた。そのなかで右端のあるテーブルのグループただ一つだけが魂の抜けたかのように暗かった。
「お!いたいた。やっぱり暗い顔をしているな。」
「あのグループなのか?」
「ああ、あのグループさ。じゃあ、そろそろ俺は無事であることを伝えて楽にさせてやるか。」
そう言うとベルムはそのテーブルに近づいて声をかけた。
「よう!しけた面してんな。大丈夫だったか?セイン。」
「・・・・・!!べ、ベルム?」
「おう!俺以外に誰に見えるんだよ。」
「うう、心配したじゃないか。どこをほっつき歩いていたんだよ?」
「ちょっと森で迷ってしまってな〜すまんすまん。」
「まあ無事でなによりだな。で、そちらの人は?」
「こいつは俺の命の恩人だ。詳しくはテーブルで酒やなんかでも飲みながら話しようや。」
そう言われて自分は空いている椅子に腰をかけた。