18話 荒野の決闘
セイン視点
「キン!ぐはぁ!」
「まさか相手が『サーチ』を使える者がいるとは・・・・予想外でしたね。」
『サーチ』とは目に見えぬ人や物を見つける魔法であるため、盗賊がよく使いそうな気がするが実は違う。『サーチ』は捜索対象を見つけるために長い時間と魔力を用する、探す範囲が広ければ尚更魔力を消費する扱いに慣れるのは難しい魔法なのだ。一般的には、騎士団の人の救出や遺跡の発掘作業などに用いられる。
盗賊は一人倒してもその穴を埋めるべく一人がその場所に入り闘う、その間に倒された仲間を治癒魔法で治療する。そしてまた一人倒されると治療の終えたやつがその穴の埋める。
「これはきりがないですね。」
周りを見回す。アリアは盗賊側の魔術師数人と交戦中、カルロはその補助をしている。
「ユウ君は・・・・」
悠がいるであろう方向を見ると何体もの水の竜が黒い法衣の男を囲んでいるのが見える。
「あれはいけない!くっ、『サファケーション サンド』!」
セインは咄嗟に悠の身が危ないと思い、魔法を放つ。言い放つといきなり足下の砂が生き物みたいに動いて盗賊達に纏わりつく。
「なんだこれは!?くそ、離れねー。」
「うるさいですね。そろそろ倒れて下さいよ。」
セインは手に魔力を込める。と同時に今まで動いていた砂が固まった。盗賊は術に驚きながらも直ぐに砂の束縛から抜け出そうと試みる。
「無駄ですよ。それは砂と砂の間に魔力を挟むことで砂同士を結合させる魔法の応用。解除は魔法の発動者である私にしか出来ません。では私は急いでいるので。」
セインは少しでも早く悠の援護に回ろうとその場を立ち去る。
(私の記憶が正しければ先ほど見えた魔法は野生のグラニクスよりも強力なものだ。待っていてくれ悠くん、今私が行く。)
だがそこに走り寄る一つの影。その両手には短刀が握られている。影は砂漠を駆けるセインに音無く近寄る。そして
「ジャギイイィィィン!!」
斬りつけた剣はセインの首ではなく、セインの剣の鞘によって遮られていた。
「私は急いでいるのですが?」
「ははっ、そうはさせねぇぞ。我、団長バルザは一人の戦士として貴殿に決闘を申し込む!」
「そうですかあなたがこの一団の・・・・ですが残念です。私はあなたに構っている暇はな「逃げるのか?ハイムの騎士よ。」・・!・・何者です?」
「そう驚くことないだろ?今、この先のウィルドの干魃で川も干上がっている。そんな中、通常でも水源のあまりない砂漠を通るなど正気の沙汰ではない。」
「それにお前さんの剣にはその証である紋章も刻まれているしな。」
ハイム王国の剣、特に騎士団や近衛兵のものには特徴がある。それは刀身に鳥の紋章があることだ。紋章があることは別におかしいことではない。紋章は兵士にとって自らの所属する国を示す云わば身分証明書のようなものである。
「ですがあなたに剣は抜いていませんが?」
襲いかかった刃を剣で受け止めたが受け止めたのは鞘で刀身ではない。
「俺の目には見えるんだよ。その鞘に収められた刀身がなぁ!元パレス国第五騎士団三番隊隊長 鷹の目のバルザ、参る!!」
(これは助けに行くことは難しそうですね。)
「では早く終わらせましょう。」
こうして荒野での決闘は始まった。
アリア&クルス 視点
「クルスなんなのこの敵数は?というか相手が『サーチ』使うなんて聞いていないわよ!?」
今、アリアとカルロは敵魔術師に囲まれている。こちらもセインと同様『サーチ』で見つかってしまったようだ。
「そんなこと言われても・・・・予想外なのは僕も同じだよ。」
相手は見た限り質のいい武器を持っていて、妙に統制がとれていて、『サーチ』を使用出来ている。
(これはもしかすると戦士団かなにかの崩れや戦の敗走兵かもしれないな)
「でも今は目の前のことに集中しようよ。」
「そんなこと言われなくてもわかっているわよ。・・・・・・セインは大丈夫なの?」
アリアたちが戦闘を開始してからもう大分時間が経った。それでもまだ数だけでは相手が有利。
アリアは敵魔術師の対応に集中していて、周りの状況を確認する暇がない。
「えーっと、セインは大将と一騎打ちみたいだよ。」
「へぇ、そう。まあ、セインは大丈夫でしょ。」
「だろうね。あとユウ君は・・・・・・!!アリア、緊急回避!!」
「え?」
チュン、バリバリバリバリ
「キャアァァ!!」
「ぐはぁ!」「ぎゃあああ!」
危機一髪のところでアリアは回避したが盗賊たちは通り過ぎた何かに直撃したようで、体中を痙攣させながら倒れている。
「な、なんなの?」
「魔法で発生した雷みたいだよ。多分、ここまで広範囲に広がったのは見たところ、ユウ君の相手の魔術師が放った広範囲水魔法のせいみたいだよ。」
「え、さっきのがその放たれた雷だったっていうの!?」
「うん、多分ね。そして僕の知っている限りでは水と雷がぶつかり合い続けるととんでもないことになる。」
アリアも魔術師だが水魔法の知識は水の精霊の血族であるカルロには遠く及ばない。
「とんでもないこと、って何よ?」
「これは水魔法を使う魔術師にとって自殺行為とも言われる行為なんだけど強い水と雷の魔法が長くぶつかり合うと・・・・」
「合うと・・?」
カルロは今も魔法の衝突で黄色く光っている方向を見ながら言う。
「最悪・・ユウ君は死ぬかもしれない。」
そうしてカルロは急ぐ、悠のもとへ。
その後すぐにアリアは耳を塞ぐほどの大きな音とともに空に炎が燃え広がるのを見た。
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