13話 精霊の血族
ミツウロコです。
いつもと同じく書いていたら、早く書き終わってしまいました。
いつもは書いていてもあまり進まないのにな〜。
この差はなんだろう?
マハド砂漠を目指して町や森などを通り、南に20キロ程は歩いただろう。周りは荒れ地になっている。
「あの、セインさん。少し・・休みま、せんか?」
セインさんたちは長く歩くのに慣れているのか息一つ漏らしていない。でも僕は違う。ただどこにでもいる高校生だ。それにこの格好、長くて少し重たいローブを着ているため足取りも遅い。ただローブにカダウンをしまえる程の収納性があったのが不幸中の幸いだ。(しかしこのローブの構造が全くよく分からない。何故薄っぺらい布に物が入るのか?)
「そうだね。けっこう歩いたし、そろそろ休憩を挟んでもいいと思いますよ副隊長。」
「そうですね。ここからもう少し行ったところに川があります。そこで休みましょうか。」
少し歩くと川が流れていると思われる場所に着いた。
「川・・・・無いですよ。」
やっと休めると喜んだ矢先の今この状況、絶望感は計り知れない。
「確かに前来た時はあったんですけどねぇ。」
見渡す限り、岩、岩、岩。川らしきものは見当たらない。特に気になるものといえば堀のようなのがあるだけ。
「この堀が川だったんじゃないかな?」
カルロがいつもと変わらぬ笑顔で言う。
「そのようね。魚の骨のようなものも見えるし、場所も一致なら間違いと思うわ。」
「そのようですね。多分、ウィルドの干上がりがこちらにも影響を与えているのでしょう。この辺りの川や水路の水は全てウィルドからきていますからね。」
そこで僕は今まで考えていたことを聞いた。
「ここまでで思ったんですけどウィルドとはどんな国なんですか?」
「ウィルドとは水の精霊が国全体に宿る国だよ。ウィルドは昔から水を愛し、水とともに生きてきた国なんだ。ウィルドは元々、ウンディーネなどの水の上級精霊が何もなかったこの土地に興した国なんだよ。昔は水も随分と重宝されたみたいだし、当時不治の病と言われた病気を水の精霊は治してくれたことに今も感謝しているため水の精霊を国の守り神として祭り上げているんだ。」
「へぇ。そうなんですか。それにしてもカルロがそんなに話す人とは思いませんでしたよ。」
僕が言ったことに何がおかしいのか分からないがカルロとセインさん、そしてアリアさんの僕以外の三人がクスクスと笑い出した。
「?どうかしました?何か僕変なこと言いました?」
「それはね」と笑い終えたアリアさんが僕に理由を教えてくれた。
「それはね。カルロがその水の精霊の『血族』だからよ。」
「え?ええーーーっ!!えっでもカルロはどこからどうみても人じゃないですか!?」
「だから言ったじゃない。カルロは血族、だから血の繋がりはあるだけで列記とした人間よ。」
「でもさっきウィルドは水の精霊が興した国だって・・・。」
ここで当の話の本人であるカルロが答えてくれた。
「確かに昔はそうだったんだけど歴史が流れるにつれて人とも関わりを持つようになったんだ。あそこは海と川も近くにあるから貿易の拠点にもなるから、いろいろな種族と交流を深めることは自分たちのメリットに繋がるからね。でも今も国の上層部は国を興したウンディーネなどの上級精霊の血族が国を動かしているんだよ。」
「な、なるほど。」
「だからそんな水の上級精霊が守り神としている国が普通干上がることは有り得ないんです。わかりましたか?」
「わかりました。でもここでこの様子だとすればウィルドはもう・・・。」
考えたくはないが今自分たちがいる場所でこの被害だ。ならばこの先のウィルドが無事という可能性は極めて低いと言える。
「そうですね。これは休んでいる暇はなさそうですね。」
「でも先に行かせてくれそうもないみたいよ。」
「みたいだね。」
「何がですか?」
「ユウ君は気がつかないかもしれませんが今私たちは囲まれていますよ。たぶんウィルドが緊急事態でこのあたりの警備が手薄になったところを狙い、この干上がりで疲労困憊の旅人や商人を襲うつもりの盗賊かなにかでしょう。」
盗賊がいるという指摘に内心びっくりしながら自分たちの周辺を索敵するとあまりはっきりとは見えないが動く影がざっと十五程確認できる。
「でも幸いなことにあちらは私たちを騎士団の者とは気づいていない様子です。」
「でもあの人数よ、ただ突っ込むだけでは背中を取られてしまうわ。」
「だからこの場合は敵を攻撃可能範囲まで近付けさせてから叩くのが有効ですね。」
セイン、アリア、カルロとテンポの良い作戦会議。
「でも簡単には敵は引き付けられないのよね。」
ここで僕は思いついた。いや、思いつかされたと言った方が良いかもしれないが思いついてしまったのだった。
「では誰かが囮になればいいんじゃないですか?」
「なるほど。そのてがありましたか。ではユウ君、」
「「「君が囮になってくれませんか?」」」
(うわ〜、ベルムの役回りが僕にきてしまったかぁ〜。)
このとき、僕は初めてベルムの存在を必要とした気がした。