12話 早起きの災難と王都出発 《後編》
ミツウロコです。
PV 14000突破! ユニーク 4000突破!
こんなに不定期更新なのに見てくださる方がいて嬉しいです。(/_・、)
これからも更新頑張ります。
「じゃあ、これが最後だな。」
僕は傍に置いてあった剣を手に取ると駆け出した。狙いは鎧くんの中で光輝く核ただ1つ。
だが僕が鎧まであと一歩のところまで近づいた時突然、核が強く光りだした。すると相手の手には戦斧が握られており、両手で戦を振り上げて僕を叩き切る体制をとっていた。
ここで僕は鎧が今まで動かなかったわけを理解した。
(そっか、動けなかったわけじゃないんだ。確実に獲物を仕留めるために機会を窺っていただけなんだ。ちゃんとここまで考慮しておくべきだった。)
悔やむが遅い。ここはもう相手の攻撃圏内、今から後退したところで戦斧を振り下ろされて終わる。だが核を破壊出来れば、鎧は戦闘不能にできるが核を破壊されて鎧に力は宿らなくなる。すると鎧の持っている戦斧は滑り落ち、あとは重力に従って核を破壊した直前の体制の僕に落ちてくる。が、僕はこの体全体を隠す程のローブを身に纏っているため避けるのは難しい。
(でもこのまま何もせずに終わるのは嫌なんだよね。)
(いざという時には我がついている。安心しろ。)
(うん。そうだね。)
「か、覚悟!」
僕が核に剣を突き立てると同時に鎧も戦斧を振り下ろす。
・・パキィィィン!!
核が割れると同時に中から大量の魔力が漏れ出し、その際の閃光が僕の視界を一瞬奪う。
「うわっ!?目が!・・・・っ!!」
(ユウよ、上からくるぞ!早く避けぬか!さもなくば本当に“死ぬ”ぞ?)
「・・えっ?」
クリスタルからの念話を聞き、すぐに上を確認すると僕の顔の数十センチ前には降下してくる戦斧が存在していた。
「う、うわあぁぁぁぁ!!」
(もうダメだ。いくら鎧を倒したとはいえ今の僕の力であの戦斧を防ぐ術は・・・・ない!)
怖くなり、俯くユウ。あとユウと戦斧の距離・・25・・20・・10。もう当たると思ったその時。
カキィィィン
金属と金属がぶつかり合うような音。それは室内に響き渡り、数秒としないうちに消えた。
「・・・・一体何が起きたんだ?・・今も僕が生きているということはあの戦斧はどこにいったんだ?」
ふと周りを見回すと自分の後方に刺さっているいるのに気づく。
(ユウよ!おぬしは本当に駆け出しの魔術師なのか!?)
(どうしたの?いきなりそんなこと。)
(・・今、おぬしにあれが落ちて当たりそうになった時に何やら強力な結界のようなものが現れて、おぬしをあれから守ったのだ。あのような結界は駆け出しの魔術師が造れるものではない。)
ユウは異世界にうかれていて大事なことを忘れていた。
この世界に来る前に自称神様が約束してくれた3つのお願い。
1.黒魔法を使えるように
そして2と3が・・・・・・多重の障壁と物理的衝撃に強いローブ
(2と3をすっかり忘れてたーー!!)
(で、これはどう説明してくれる?)
(あーえー、それはあれだよ。そのこのローブに結界みたいなのが発動する効果が付与されているかんじだよ、ははは。)
(あのような効果が付与されていると言うのかこのただ黒い法衣に。だとすればこれは相当な値のものだと思うのだがまさか盗んだか?)
(えっ!?そんな失礼な。これは単なる貰い物だよ貰い物。)
(貰い物、とな?)
疑わしそうな声で聞いてくる。
(・・・・む、人が来るな。今一度、念話を切るぞ。)
ごまかしが効いたのに安堵を感じているとタッタッタッ、と駆けて来る複数の足音を聞き取った。近づいてくる足音がセインたちのものだと気がつくのにそんな時間はかからなかった。
「ユウくん!大丈夫かい!」
「坊主大丈夫か!?」
セインさんたちが入ってくるとセインさんとガバンさんの声が室内に響き渡った。
「ええ、僕は何ともないですけど‥。」
「それは良かった。だがここには防犯のゴーレムがいたはずだがあいつはどうした。」
「それならあそこに・・・・。」
勝手にゴーレム壊してしまったことに罪悪感を抱きながら倒れているゴーレムを指差す。ガバンさんはゴーレムに近づくとしゃがみこむ。
「いやーあの、これはそのいわゆる正当防衛でして、僕は悪くないというか。でも僕が勝手に入らなければこんなことにはならなかったと思うので僕にも責任があるのもまた事実なわけで。」
「ほーお、こいつを坊主が一人で倒したのか?」
「あのその・・・・お店をこんなに散らかした挙げ句ゴーレムまで壊してしまい・・ほ、本当にすいませんでした!」
(うう、流石にこれはどうしようもないよ。自分の蒔いた種、身から出た錆だし素直に誤ろう。)
と以上のことを思っているといきなりガバンさんが笑い出した。
「え、え?あの・・・・。」
「そんなに気にしなくても大丈夫だ。確かに坊主が入ったからこいつが働いてしまったが昨日、今日届けると伝え忘れた俺にも非はあるしな。」
「で、でも・・「それに」・・?」
そういうと背中に背負っていた細長い箱を下ろしながら言った。
「それにこの俺の作ったこれがお前に使いこなせるかどうか心配だったのだが魔術師の身であるお前が俺のゴーレムを倒せたんだ。きっとお前の役に立ってくれることだろう。」
ガバンさんが持ってきた箱を開けると中には全体的に灰色の剣が入っていた。普通と違うのはその刀身の長さ、刃渡りは180㎝にも及ぶ長剣の域を超えた長剣なのである。
箱から出された剣を見たセインは驚愕の声を漏らした。
「なんですか!?この剣は。槍にも引け劣らない長さですよ。」
「こいつの名は『カダウン』だ。長いが硬化の魔法がかかっているからまず簡単には折られない。あとこいつの最大の特徴である刀身の長さでただ横に剣を凪払うだけでもその攻撃可能範囲は半径2mを超える。」
そこまで話したところでセインさんは質問を出した。
「それではこの剣には弱点がないということですか?」
「いや、こいつにも弱点はある。刀身が長いため小回りが効かないのと全体が大きいからどうしても大振りになるため隙が多いところだ。」
「正に諸刃の剣ですね。」
「俺も頼まれた時は驚いたぜ。こんなものを使うのは魔物でもそうはいないからな。それにしてもなんでこんなものを作って欲しいと思ったんだ?」
「それは・・・・・・」
王都中央門前
空は星空から青空に変わり、東からは朝日が顔を出している。
「ユウくんとセインが遅いね。」
「何かあったのかしら?」
カルロとアリアがユウたちのことを心配する。
「ふっ、あの変態悪魔などどこかでくたばっていてくれれば俺にとっては都合のいいことだ。」
「ベルムあんた・・・・懲りないわね。・・・・!!・・・・後ろ。」
「どうしたの?そんなに顔を強ばらせちゃって。後ろになにかいるの?きっと虫か何かで・・しょ・・。」
微笑むセインと固まるベルム。僕はこれと同じ光景を前に一度見たことがある気がする。
「ねぇ、ユウくん。どうしたの?遅かったけど‥。」
「武器を取りに行っていたら、ハプニングに巻き込まれちゃって。」
「そっかぁ、大変だったんだね。」
そこに事を済まして戻ってきたセインさん。
「セインさん、ベルムとは終わったんですか?
「はい。あいつは少し早いですが天に召されました。」
「そうですか。じゃあ、出発はどうします?」
「それに関しては予定通りに行きますよ。これ以上遅れるわけにはいけませんからね。」
このように僕たちの旅は始まったのでした。
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