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もしチートラノベの主人公が自分が小説の登場人物と自覚したら。

作者: 相風 創
掲載日:2026/05/21

俺の名前はジェロム。


最近Bランクに上がった冒険者だ。


冒険者なんて仕事をしてる分、今まで色々あったし、危険もあったけど…俺の力でなぎ払ってきた。


人々には実力を認められ、いい感じの女の子もできた…かなりの充実した人生じゃないだろうか。


…これが本当なら。


この世界…あまりにもおかしい。


政治も経済も適当なのに、何故か回っている。


問題だらけの世界が、まるで何の問題もないかのように維持されている。


おかしいのはそれだけじゃない。


今まで一度でも…知らない人間の人間らしいところを見たことがあるか…?


いや、考えてみれば知ってる人の中にも…


決められた言葉だけを発し、決められた行動だけを取り、決められた仕事だけをこなす…


いつでもそこにいて、ただ自分の役割を果たすだけの人間たち…


彼らは…本当に人間なのか?


俺が見てないとき…本当に動いているのか…?


人間らしく喜び、怒り、幸せを求めてるのか…?


この世界は…俺の周りだけが彩られている。


それ以外は、灰色のからくり…


これは…何だ?


真っ直ぐ進んでいた世界が、急に向きを変える。


俺の都合に合わせて。


俺は常に勝ち、死なず、成り上がっていく。


これが…偶然なわけないだろ。


俺自身も…どこかおかしい。


俺は…アリアが俺にあからさまな好意を向けていることを知っている。


なのに何故一度も受け入れようとしなかった?


何故関係を進めなかった…?


俺は…アリアのことを何か知っているのか?


好きな食べ物は?

趣味は?

普段何をしている?


…そもそも、そんなものが存在するのか…?


アリアの中身は…本当に彩られてるのか?


アリアは…本当に人間なのか?


…俺は?


まるで、作り話の英雄談みたいだ。


まるで…羊皮紙に書かれた…小説…


この世界が小説なら?


俺は…本当に人間なのか?


俺は…俺なのか…?


俺は…俺自身についてはちゃんと知っているのか…?


…そうだ、俺は兎肉が好きだった。キノコは少し苦手で…幼い頃は玉遊びが好きだった…


…何故今頃そんなことが思い浮かぶ?


今までは…知らなかったのか?


自分のことなのに?


…更新されている。俺の記憶が。


俺の「設定」が。


息が詰まってくる。


俺は…本当に作られた存在なのか?


この世界…小説の「作家」によって?


落ち着け…他に何か…


俺は…自分の両親の顔を覚えているか?


…また更新された。


俺は孤児だった…


……「いい加減にしろよ!!!俺のことを何だと思ってるんだ!!!!!」


俺は…本当に自分の意思で動いているのか?


ただ…「作家」に操られてるだけじゃないのか…?


俺は…生きているといえるのか…?


俺は部屋の中にこもり、一晩中考え込んだ。


自分なりの答えを探すまで…


しかし、この思考もまた「作家」の操作なのかも知れないという恐怖から逃れることはできなかった。


お前は…本物なのか?


俺は…本物なのか?


俺は…何なんだ…?


その答えは…どんなスキルや魔法を使っても知り得ないものだった。


そんなものは所詮…この世界の一部なのだから。



***

「ジェロム!おはよう!今日も魔物討伐に…」


「あ、アリア…俺…冒険者やめるよ」


「…えっ?どうして…?!この間Bランクにあがったばっかりだし実績も着々積めて…」


「それは聞かないでくれ。それと…もう一緒にいるのはやめよう」


「…ジェロム…?」


「どうしたの…?私…何かしたかな…?謝るからそんなこと…」


「だから、」


「聞かないでっていっただろ」


「ジェロム…私わかんないよ…ジェロムと離れたくないよ…」


「だって私…ジェロムのこと好きだもん…!」


「…本当か?」


「俺のこと…何か一つでもわかってるのか?」


「どうして俺を好きになったのか…覚えてるか?」


「そ、それは…魔物に襲われてた私をジェロムが助けてくれて…」


「お前ほどの実力者が、どうしてあんな魔物に殺されかけてたんだ?」


「えっ」


「助けられたから好きになるなんて…どう見てもおかしいだろ」


「…」


「でも…好きなのは本当なんだよ…!だって、ジェロムは優しいし…」


「…もうやめよう、こんな話。藁人形と話してても仕方ない」


「ちょっと!!ジェロム、どこ行くの!!」


「…もう、探さないでくれ。一人で…やりたいことがあるから」


「ちょっと、ジェロム!!待ってよ!!!」



俺には…何故か自我が芽生えた。


「作家」に反抗することもできるようになった。


…でももし、これも「作家」の操作のうちだったらどうする…?


いや。


ある。


俺の行動が「作家」の操作じゃないと確信できる方法が。


「作家」が俺に絶対にやらせないだろうことをやる。


整合性を壊す。


脈絡を壊す。


蓋然性を壊す。


そして…この小説(世界)を壊す。

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