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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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3-5

静寂を破るように、

「カチッ」という音が室内に落ちた。


非常灯がゆっくりと点り、

淡い光が図書室を照らしていく。

棚の影が形を取り戻し、雪明かりの白と溶け合う。


透と奏は、同じ瞬間に顔を上げた。

互いの目が、光の中で静かに交わる。


言葉はなかった。

けれど、笑みが自然に生まれた。

それだけで十分だった。


透はそっと、奏の手を離す。

その指先に、まだ確かなぬくもりが残っている。

冷たい空気の中、それが小さな炎のように胸の奥で灯り続けていた。


――光が戻っても、あの静けさは、たぶんもう消えない。

あの白の中で、やっと“言葉”が生まれた気がした。


透の心の声が、雪の降りやんだ空に溶けていく。


窓の外では、夜の闇がゆっくりと薄れていく。

白い屋根の向こう――

かすかな朝焼けが、雪の面を染めていた。


それはまるで、新しい季節の息吹。

“沈黙の季節”が終わり、

静かな“言葉の再生”が、確かに始まっていた。

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