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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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3-4

小さな震えに、透は気づいた。

本を抱えていた奏の手が、かすかに揺れている。

寒さのせいか、それとも――別の理由か。


透は迷うように一度だけ息を吸い、それから静かに手を伸ばした。

そっと、その震える指先を包み込む。


「……寒いね。」


わずかに掠れた声。

けれどその言葉は、冷えた空気をやわらかく照らす灯のようだった。


奏は驚いたように透を見上げ、すぐに小さく頷く。

そして、ためらいながらもその手を握り返した。

指先から、体温がゆっくりと伝わる。

言葉の代わりに、確かなものが流れ込んでくる。


外の雪は、降り止む気配もなく静かに積もっていく。

窓の外の白が、二人の手を淡く照らした。

光の輪が生まれ、静寂の中に息づくように広がっていく。


沈黙――けれど、それはもう“断絶”ではなかった。

互いの存在を確かめるための、あたたかな


奏は胸の奥で、静かに呟く。


「言葉がなくても、届く瞬間がある。

 沈黙が、やっと優しさに変わった。」


停電で失われた光の中で、

ふたりの手だけが、確かに世界を灯していた。


雪は降り続ける。

すべてを包み、洗い流し、

白い静けさの中で――

ようやく、言葉のない理解が息をしていた。

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