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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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2

放課後の教室。

日はもう傾き、窓の外では冷たい風が落ち葉を巻き上げていた。

誰もいなくなった机の列に、白い光が斜めに差し込む。

その中で、奏はひとり、鞄を抱えて立っていた。


透は黒板の前に立ち、新聞係の原稿を片づけている。

カサリ、と紙の音。

その音が、静寂の中でひどく大きく聞こえた。


奏は唇を噛み、意を決して声をかけた。


「ねえ、もう少し……自分のこと、言ってよ。」


透の手が止まる。

振り向いた彼の目には驚きよりも、どこか困惑の影があった。


奏は続ける。


「いつも私ばっかり見てる気がするのに、

 あなたの中が、ぜんぜん見えない。」


風が窓を叩き、カーテンが揺れる。

その音が、ふたりの間の沈黙をいっそう際立たせた。


透はしばらく黙っていた。

視線を落とし、机の端に指を置いたまま、静かに言う。


「君のことは……言葉にしたら、壊れそうで。」


その声は穏やかで、けれど、どこか遠い。


奏は目を伏せる。

心の奥が、じわりと冷たく滲む。


「……そうやって黙るの、ずるいよ。」


透は何かを言いかけ、結局その言葉を飲み込む。

息だけが、かすかに白く曇った。


教室の時計の針が、静かに一つ音を刻む。

それが、ふたりのすれ違いを告げる鐘のように響いた。


窓の外では、木枯らしが再び吹き抜ける。

落ち葉が舞い、夕陽がそれを赤く染めていた。

そして――その光の中で、ふたりはただ、立ち尽くしていた。

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