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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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6

北條が最後のファイルを閉じ、伸びをしながら笑った。


「よし、これで最後。帰るか」


その声に、奏は顔を上げて微笑む。

「うん、ありがとう。手伝ってくれて」


ふたりはほぼ同時に椅子を引き、軽い音を立てて立ち上がる。

沈みかけた陽が窓の縁を照らし、室内の空気を金色に染めていた。


奏は鞄を肩にかける前に、ふと窓の外へ視線を向ける。

校庭の向こう――オレンジに染まった風の中で、コスモスがゆるやかに揺れていた。

光と影が花びらを通り抜け、そのたびに色が少しずつ変わる。


胸の奥に、名もない痛みがかすかに浮かぶ。


「どんなに整理しても、思い出だけは、きれいに並べられない。」


心の中でそう呟くと、彼女は小さく笑って廊下へ歩き出した。

北條の足音と並んで、ふたりの靴音がゆっくりと遠ざかっていく。


残された生徒会室。

窓から吹き込む風が、机の上の紙をひとつめくり、

その隣に――ひらりと、花びらが落ちる。


静まり返った部屋の中で、

その一枚の花びらだけが、まだ夕陽の名残を映していた。

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