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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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5

机の上には、整然と積まれたファイルの山。

角はきっちりと揃えられ、どの書類も乱れなく閉じられている。

まるでその秩序の中に、心の揺れを封じ込めようとするかのようだった。


奏はホチキスを置き、息を吐いた。

その吐息がわずかに白くなるほど、窓際の風は冷たい。

外では、夕陽を受けた秋桜がゆるやかに揺れている。

ひとひらの花びらが、風に乗ってふわりと室内へ――


指先に、やわらかな感触。

奏は思わず動きを止める。


花びらが、そっと彼女の指に触れて、すぐに机の上に落ちた。

それはほんの一瞬の出来事だったのに、胸の奥で何かが音を立てて揺れた。


――透の姿が、脳裏をよぎる。

夏の光の下、隣で笑っていた横顔。

声も、仕草も、記憶の底から淡く浮かび上がっては、すぐに霞んでいく。


奏は小さく息をのむ。

そして、落ちた花びらを見つめながら、そっと指を握った。


整然と積まれたファイルの上に、たった一枚の花びら。

その小さな乱れが、彼女の胸の中の“まだ片づけられないもの”を映していた。

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