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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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4

奏は静かにページの端を揃えながら、ふと動きを止めた。

指先が、紙の薄い縁をなぞる。

その感触を確かめるように――まるで、過ぎ去った時間の輪郭をたどるように。


窓から射し込む夕陽が、机の上を斜めに照らしている。

光は奏の手元を優しく包み、その影を静かに揺らす。

ページの白が金色に染まり、空気の中で埃が小さく舞っていた。


「話すって、こんなに簡単だったっけ」


小さく、息を混ぜた声。

言葉がこぼれ落ちるように、静寂の中へ溶けていく。


「言葉を出せば、ちゃんと届く。

笑えば、相手も笑い返してくれる。

……透くんとは、どうしてあんなに難しかったんだろう。」


自分の声が、少しだけ遠くに聞こえた。

その響きは、部屋の静けさの中でゆっくりと消えていく。


夕陽が傾き、光が彼女の頬をかすめて陰を落とす。

その陰は、まるで“過去と現在の境目”のように、彼女の表情をふたつに分けた。


笑顔の奥に残る微かな痛み。

その痛みさえも、今は静かな秋の光に溶けていく。

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