表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/94

3

北條がペンを置き、少し伸びをするように窓の方へ視線を向けた。

外では風が秋桜コスモスの群れをやさしく揺らしている。

淡い桃色の花びらが、夕陽の光を受けてかすかに透けていた。


「もうすっかり秋だな。文化祭、あっという間だったな」

北條の声は、どこか名残惜しげだった。


奏は手元の報告書をまとめながら、静かに頷く。

「うん……。なんか、終わった実感がまだないけど」


北條が少し笑う。

「でも、あの展示、評判よかったよ。お前のデザイン、やっぱりすごかった」


その言葉に、奏はわずかに肩をすくめて、照れくさそうに笑う。

「……ありがとう」


けれど、その笑顔の奥で、胸のどこかが微かに波立っていた。

――褒められてうれしい。

 けど、誰に言われたかったんだろう。


窓の外、風に乗って一枚の花びらが舞う。

それが光を受けながらゆっくりと落ち、机の上のファイルに触れた。


その瞬間、ほんの一瞬だけ、透の姿が胸の奥をかすめる。

教室で見た横顔、届かなかった声。


生徒会室の穏やかな空気の中で――

「いない誰か」が、ふと存在を取り戻すように浮かび上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ