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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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奏と北條 ― 代わりの会話(10月中旬)1

放課後の生徒会室。

傾きかけた秋の陽が、窓ガラスを透かして机の上に細い影を落としている。

外では、野球部の掛け声が遠くでかすれて響いていた。

だが、その声も次第に夕風に吸い込まれ、室内には紙をめくる音だけが残る。


奏は机に向かい、文化祭の報告書を一枚ずつ確認していた。

分厚いファイルがいくつも積まれ、整然と並ぶ資料の山。

ホチキスを留める指先が規則的に動く。

その所作はどこか、無意識の祈りのようだった。


窓辺のカーテンが、風に揺れてふわりと膨らむ。

淡いオレンジの光が、その布越しに柔らかく室内を染める。

静かすぎる空間。

その静けさに、奏はどこか安心していた。

けれど同時に――耳の奥で、何かを聞き逃している気がしてならなかった。


心を整えるように、彼女はまた一枚、紙の端を揃える。

きっちりと、何も乱れのないように。

その几帳面な仕草だけが、胸の奥のざらつきを覆い隠していた。

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