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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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3

奏は手元のファイルを揃えながら、無意識にその端を指でなぞっていた。

指先に伝わる紙の感触が、どこか遠い記憶を撫でているようだった。


「話すって、こんなに簡単だったっけ。」


言葉を出せば、ちゃんと届く。

笑えば、相手も笑い返してくれる。

それだけのことが、こんなにも穏やかで――やさしい。


けれど、その穏やかさの中でふと、胸の奥が少しだけ疼いた。


「……透くんとは、どうしてあんなに難しかったんだろう。」


ページの端をなぞる指が、一瞬止まる。

まるで、そこに残された“まだ乾かない言葉”を確かめるように。


窓の外で風が吹き、秋桜の花びらがひとつ、静かに揺れた。

その揺れが、奏の心の奥に、言葉にならない余韻を残していった。

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