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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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2

北條がペンを置く音が、静かな部屋に小さく響いた。

ふと視線を上げた彼の目が、窓の外の秋桜に向かう。


「もうすっかり秋だな。文化祭、あっという間だったな」


奏も手を止め、彼と同じように外を見る。

風に揺れる花々が、淡い陽の光を受けてやさしく揺れていた。


「うん……。なんか、終わった実感がまだないけど」


北條が、少しだけ笑う。

「でも、あの展示、評判よかったよ。お前のデザイン、やっぱりすごかった」


奏はわずかに頬を染めて、視線を落とす。

「……ありがとう」

声は控えめで、それでもその口元には確かな笑みが浮かんでいた。


部屋の空気が、ふっと柔らかくなる。

書類の白が夕陽を吸い込み、橙色に染まる。

その光の中で、奏の笑顔はどこか自然で、安堵に近い。


だが、その安堵の奥に、ほんの小さな影があった。

――“本当に、これでよかったの?”


机の端で、ホチキスの銀が光を反射する。

それはまるで、心の奥に刺さったままの小さな棘のように、

夕暮れの色を静かに返していた。

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