表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/94

5

教室の隅に、使われなくなった扇風機があった。

 コードは丁寧に巻かれ、金属の羽根に薄く埃が積もっている。

 その沈黙が、「夏の終わり」を告げていた。


 窓の外から吹き込む風が、机の上のプリントを一枚めくる。

 紙が擦れる音は、まるで季節のページがゆっくりとめくられるようだった。

 誰もいない放課後の教室で、その音だけが小さく響く。


 透は鞄を肩にかけ、何も言わずに教室を出ていった。

 その背中が廊下の角で消えるまで、奏はただ見つめていた。


 静けさが戻る。

 夕陽がカーテンを透かし、光の粒が床に散る。


 奏はふと窓を見上げた。

 風が頬を撫で、淡い夏の残り香を運んでくる。


 ――風は、まだ夏の匂いを少しだけ残していた。

 それでも、ふたりのあいだの空気はもう秋だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ