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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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4

 教室の空気が、すっかり秋に変わっていた。

 夕陽は窓の端に沈みかけ、机の上の影が長く伸びている。

 誰もいない空席が、やけに広く感じられた。


 奏は鞄の紐を握ったまま、前列を見つめる。

 透の背中。

 その肩越しに見える黒板の文字が、少し滲んでいる。


 ――近くにいないだけで、こんなに遠く感じるんだ。

 同じ空間にいるのに、違う季節にいるみたい。

 夏の残り香が、もう自分には届かない。


 透もまた、前を向いたまま気配を感じていた。

 チョークの粉の匂い、紙の音、そして誰かの視線。


 ――見える距離なのに、届かない。

 何かを言おうとすると、言葉が冷たく凍る。

 それを溶かすほどの熱を、もう自分は持っていないのかもしれない。


 ふたりの思考は交わらないまま、

 しかし同じ静けさの中で、確かに響き合っていた。


 音ではなく、空気として。

 沈黙だけが、ふたりのあいだを行き来している。

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