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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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2

新しい座席表が貼り出された朝、

 透の名前は教卓のすぐそば――前列の左端にあった。

 黒板が至近にあり、教師の視線もよく届く。

 責任感のある位置だとわかってはいても、なぜか落ち着かない。


 一方の奏は、教室のいちばん後ろ、窓際の席。

 外の銀杏の葉が、風に揺れているのがよく見える。

 光が差し込むたびに机の上で影が踊り、そこだけ季節がゆっくりと進んでいるようだった。


 授業の最中、奏がふと顔を上げても、透の姿は黒板の向こうに隠れている。

 かろうじて見えるのは、チョークを持つ先生の肩越しにのぞく、透の横顔の断片。

 その表情が笑っているのか、沈んでいるのか、もうわからなかった。


 透もまた、ノートを取りながら、背後の空気の揺らぎを感じることがあった。

 窓の外を見ているとき、誰かがページをめくる音。

 それが奏のものだと気づいても、振り向く理由が見つからない。


 声をかければいい――そう思う瞬間は、何度もあった。

 けれど、言葉を探すほど、口を開くタイミングを失っていく。

 たった数歩の距離なのに、そのあいだには目に見えない“断層”があるようだった。


 その断層の上で、ふたりの時間だけが、静かにずれていく。

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