表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/94

5

夜風が、ふいに校舎裏を通り抜けた。

 木々の葉が小さくざわめき、湿った空気の中に秋の匂いが混じる。

 夏が、静かに終わろうとしていた。


 ――ジィィ……。


 蝉の声が、ひときわ強く鳴いた。

 それはまるで、届かない想いを吐き出すような、最後の叫び。

 風がその声をさらい、夜の奥へと溶かしていく。


 ベンチの上。

 透の膝に置かれた資料が、ひらりと風を受けた。

 一枚の紙片が宙を舞い、外灯の光をかすめながら、静かに落ちていく。


 それは、ゆっくりと弧を描いて――奏の足元へ。


 彼女は反射的に目を向け、息をのむ。

 拾い上げようとした手が、途中で止まる。

 そこには、ふたりの距離だけがあった。

 声も、視線も交わらない。


 ――けれど、紙だけが、その沈黙を越えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ