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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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4

夜の空気が、ふたりの間をゆっくりと流れていた。

 外灯の淡い光の下、透の背中を見つめる奏。

 あと数歩で届く距離。けれど、そのわずかな空間が、どんな言葉よりも遠く感じられた。


 ――近いのに、遠い。

 声をかけた瞬間、何かが壊れてしまいそうだった。


 透は、膝の上の紙を見つめたまま動かない。

 自分の手で作り上げた言葉たち。

 誰かに届くはずだった文章が、今はただ、白い紙の上で静かに冷えている。


 ――自分の言葉が、空っぽに見える。

 本当のことを言えば、きっと彼女を傷つける。

 だから、何も言えない。


 蝉の声が、遠くでひときわ強く鳴いた。

 その響きの中で、ふたりの沈黙だけが対話のように揺れる。


 奏の心の声。

 > 「行動で寄り添いたい。

   でも、それすら怖い。

   拒まれたら、もう戻れないから。」


 透の心の声。

 > 「言葉が嘘になるのが、一番怖い。

   だから黙る。

   でも――黙ったままじゃ、何も守れない。」


 音はなかった。

 けれど、その沈黙は、確かに“会話”だった。

 届かないまま、心の奥で、互いの声がかすかに反響していた。

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