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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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3

校舎裏の通路を、奏はゆっくりと歩いていた。

 文化祭の準備で遅くなり、帰り道の近道として、人気のない裏手を抜けようとしていたのだ。


 ――そのとき、視界の端に淡い光が揺れた。


 外灯の下、ベンチに腰を下ろした人影。

 透だった。

 膝の上の紙束をじっと見つめ、動かない背中。

 肩が小さく沈み、まるで何かを抱えたまま、夜に溶け込もうとしているように見えた。


 奏は足を止めた。

 「……透くん?」

 声が喉の奥で形になりかけて、そこで途切れた。


 夜風が頬をかすめ、蝉の声が遠くで響く。

 彼女は唇を噛みしめ、視線を落とした。


 ――モノローグ。


 「何を言っても、今は届かない気がした。

  “頑張ってるね”も、“大丈夫?”も――全部、嘘みたいになる。」


 言葉が怖かった。

 どんな優しい言葉でも、彼の沈黙を壊してしまいそうで。


 握った拳が、そっと震える。

 “行動で寄り添いたい”――そう思っているのに、足が一歩も前に出ない。


 風がふたたび吹き抜け、木々の葉が擦れ合う音が夜の静寂に混じった。

 その音だけが、ふたりの間の“届かない距離”を、静かに測っているようだった。

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