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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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2

透は、静かにベンチに腰を下ろした。

 膝の上には、文化祭用の展示資料。印刷されたポスター案や原稿の束が、夜風に少しずつめくれていく。


 指先で紙の端を押さえながら、透はその一枚一枚を見返した。

 見慣れた言葉の並び。誰かに伝えるために選び抜いた文章。

 だが、それを見つめるほどに、自分の内側が遠のいていくようだった。


 ふっと、小さく笑う。

 「……言葉って、面倒だね」


 その声は、夜の静けさの中に沈み込んでいった。

 独り言――けれど、それは懺悔にも似ていた。

 何度も言葉を選び直し、整え、削ってきた。

 けれど本当に伝えたかったことだけは、どうしても形にならなかった。


 ――モノローグ。


 「言葉を選ぶたびに、心の温度が下がっていく気がする。

  きっと“優しさ”って、もっと不器用でいいんだ。」


 風が通り抜け、紙の端をさらりと揺らした。

 透の指先が、ほんのわずかに震える。

 それは、言えなかった本音の震え。

 夜の空気が、それをやさしく包み込み、何も言わずに溶かしていった。

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