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屋上の空には、まだ夕立の名残が漂っていた。
灰色の雲が西日の光を受けて、ゆっくりと金に染まっていく。
その輝きは、まるで何かを赦すように優しかった。
だが、足元にはまだ無数の水たまりが残っている。
そこに映る空は、確かに晴れているのに、
その揺らめく光は、風に触れるたびかすかに歪んだ。
――空は晴れても、足元の水は乾かない。
透はフェンス越しにその景色を見下ろし、
奏は階段の影で、同じ空の色を目にしていた。
ふたりの世界は、ようやく光を取り戻しつつあるようで、
けれど心の奥では、まだ消えぬ滴が静かに光っていた。




