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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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5

 屋上の空には、まだ夕立の名残が漂っていた。

 灰色の雲が西日の光を受けて、ゆっくりと金に染まっていく。

 その輝きは、まるで何かを赦すように優しかった。


 だが、足元にはまだ無数の水たまりが残っている。

 そこに映る空は、確かに晴れているのに、

 その揺らめく光は、風に触れるたびかすかに歪んだ。


 ――空は晴れても、足元の水は乾かない。


 透はフェンス越しにその景色を見下ろし、

 奏は階段の影で、同じ空の色を目にしていた。


 ふたりの世界は、ようやく光を取り戻しつつあるようで、

 けれど心の奥では、まだ消えぬ滴が静かに光っていた。

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