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風が、夕立の残り香を運んでくる。
屋上のフェンスの向こう、透は手にした空き缶を軽く転がした。
雲の切れ間から差す光が、その横顔を淡く照らしている。
――同じ頃、校舎の外階段。
奏は水筒を返し、鉄の手すりに手を置いていた。
指先がまだ冷たい。そこに残る感触は、なぜか心まで重くする。
透(心の声):
> 「言葉と行動。
> どっちが“本当の思い”なんだろう。」
奏(心の声):
> 「優しさの“形”が違うだけなのに。
> どうして、こんなにすれ違うんだろう。」
風がフェンスを揺らし、階段の手すりを鳴らす。
屋上と地上、ふたりのいる高さが違う。
けれど、流れる風はひとつ――。
透の髪が揺れ、奏の浴衣の裾がわずかにたなびく。
同じ夕空の下で、ふたりの想いは交わらぬまま、
そっと重なるように、すれ違っていった。




