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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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4

風が、夕立の残り香を運んでくる。

 屋上のフェンスの向こう、透は手にした空き缶を軽く転がした。

 雲の切れ間から差す光が、その横顔を淡く照らしている。


 ――同じ頃、校舎の外階段。

 奏は水筒を返し、鉄の手すりに手を置いていた。

 指先がまだ冷たい。そこに残る感触は、なぜか心まで重くする。


 透(心の声):

 > 「言葉と行動。

 >  どっちが“本当の思い”なんだろう。」


 奏(心の声):

 > 「優しさの“形”が違うだけなのに。

 >  どうして、こんなにすれ違うんだろう。」


 風がフェンスを揺らし、階段の手すりを鳴らす。

 屋上と地上、ふたりのいる高さが違う。

 けれど、流れる風はひとつ――。


 透の髪が揺れ、奏の浴衣の裾がわずかにたなびく。

 同じ夕空の下で、ふたりの想いは交わらぬまま、

 そっと重なるように、すれ違っていった。

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