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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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3

夕立の名残がまだ地面に残る校舎裏の階段。

 雨上がりの匂いが、ほんの少しだけ冷たい風に混じっていた。

 夕陽は傾き、廊下の窓ガラスが金色に光っている。


 階段の踊り場で、奏は肩から鞄を下ろして息をついた。

 その隣に、部活帰りの北條が立つ。手には、冷えた水筒。


「ほら、飲めよ」

「え……あ、ありがとう」


 水筒を受け取ると、冷たさが掌に沁みた。

 口をつけた瞬間、喉の奥に残るのは微かな金属の味と、夏の終わりの気配。


 北條が階段の手すりに背を預け、奏の顔を覗き込む。

「最近、無理しすぎじゃない? 顔、疲れてるよ」


 奏は笑ってみせる。

「……そう見える?」


「見える見える。ちゃんと肩の力抜けよ。

 お前、何でも一人でやろうとするだろ。

 周り、もう少し頼っていいんだって」


 軽い調子の声。

 けれど、その“優しさ”が、どこか遠くから届いてくるように感じた。


「……ありがとう」


 そう言いながらも、自分の声が空の中に溶けていくのがわかる。

 どこにも響かず、誰にも届かないような“ありがとう”。


 ――“頼っていい”って言葉は、確かに優しい。

 でも、ほんとうは。

 その言葉を、“言われたい人”は、別にいるのだ。

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