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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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すれ違いの核心(8月下旬)1

 夕立が去ったあとの屋上は、まだ熱を失いきれないコンクリートの匂いで満ちていた。

 排水溝へと流れ込む雨粒が、かすかな音を立てながら光を反射している。

 空は淡い橙に染まり、ところどころに残る灰色の雲が、その光を受けてゆっくりと形を変えていた。


 吹き抜ける風は、少し湿っている。

 それでも、昼間のむせかえるような暑さを洗い流したあとの空気は、どこか優しく、息をするたびに胸の奥に夏の終わりの匂いが滲んだ。


 下のグラウンドからは、部活を続ける運動部の掛け声が風に乗って届く。

 その向こうでは、もう弱々しくなった蝉の声が混じり合い、季節の境界を告げている。


 空と地上のあいだ――世界が少しだけ静止したような時間。

 透はフェンスにもたれ、濡れた屋上の向こうに広がる夕空をただ眺めていた。

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