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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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7

夜のざわめきの中で、ふたりの姿はもう交わらなかった。

同じ夏祭りの灯りの下にいながら、

それぞれ、まるで別の夜を生きているかのように。


透は立ち尽くしていた。

人の波が彼の肩をかすめ、笑い声が遠ざかっていく。

足元を、風が抜ける。


その風に乗って、小さな紙くずが舞い上がった。

屋台のチラシの切れ端か、それとも誰かの願いの残骸か。

それはふわりと宙を回り、

やがて花火の灰のように、音もなく消えていった。


――ぱん。


夜空を裂く、ひときわ大きな音。

視線を上げた瞬間、最後の一発の花火が咲いた。


その光が、

一瞬だけ、透の頬の輪郭を照らす。

その同じ瞬間、別の場所で、

奏の浴衣の白地がほのかに輝いていた。


ふたりの間にあるのは、

わずかにずれた光の瞬き――

光と闇の“タイムラグ”。


それが、まだ埋まらない距離のように、

静かに夜の中へ沈んでいった。

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