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提灯の光が、夜風に揺れている。
ざわめく人の波の中で、
二人は別々の場所にいながら、
同じ夜の色を見上げていた。
──奏。
北條と並んで歩きながら、
人混みを抜けるたびに、肩が少し触れた。
紙袋の重みが消えて、ふっと胸が軽くなる。
(透くんの言葉は、優しいけど――どこか距離がある)
(“頼ってほしい”って言われると、
ちゃんとできていない自分を、見透かされる気がして)
北條の笑い声が混じる。
彼は何も言わず、ただ前を見て歩いている。
(……北條くんは、ただ“やってくれる”だけだから)
(それが、こんなに安心するなんて)
──透。
人混みの外れ、屋台の灯りが届かない場所で、
彼は立ち止まっていた。
掌の中で、スマホの光が滲む。
(僕は、行動してるつもりだった)
(彼女の言葉を待たずに、支えようとしてた)
(……でも、きっと“言葉”の形を間違えたんだ)
夜空に、最初の花火が上がる。
破裂音が空気を震わせ、
光の花がふたりの間に広がっては、すぐ消える。
(伝えるって、こんなに難しいのか――)
音の余韻だけが残り、
それぞれの心の中で、
まだ消えきらない火花が静かに揺れていた。




