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夏祭りの夜(8月中旬) 1
夏の夜、神社の参道は人であふれていた。
提灯の赤が連なり、風に揺れては淡く滲む。
たこ焼きの香ばしい匂いと、綿あめの甘い匂いが入り混じり、
遠くから響く太鼓の音が、夜空の底で脈を打っていた。
風鈴がひとつ鳴る。
その音の向こうで、浴衣姿の生徒たちが笑いながら行き交っていく。
金魚すくいの水面が光を返し、花火のように揺れていた。
その人波の中に、透と奏の姿があった。
透は浴衣ではなく、いつものシャツに袖をまくり上げている。
奏は淡い藍色の浴衣を着て、手に小さな巾着を提げていた。
二人の間に、夜のざわめきが流れていく。
待ち合わせの時間はとうに過ぎていたが、
他のクラスメイトの姿はまだ見えない。
「……少し早く来すぎたのかもね」
透が苦笑しながらスマホを覗く。
その横顔を、奏は一瞬見つめて――すぐに視線を外した。
提灯の光が彼らの頬を赤く染め、
風が通るたびに浴衣の裾とシャツの裾がふわりと揺れた。
夜はまだ始まったばかりだった。




