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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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6

 夕陽が沈みかけ、窓の外の光がゆっくりと群青に変わっていく。

 美術室の中は、橙と青が混ざるあいまいな色に包まれていた。


 透が筆を置き、静かに言う。

 > 「……仕上げ、明日にしようか」


 奏は短くうなずくだけで、視線を合わせなかった。

 その横顔に、言葉の行き場を失った沈黙が漂う。


 透は片づけかけた画材を手に取り、

 振り返らずに扉へ向かう。

 扉が閉まる音が、静かな余韻を残して消えた。


 机の上には、一枚のポスターだけが取り残されている。

 中央に書かれた題字――「交わり」。

 そのすぐ下に、まだ塗り残された白い余白があった。


 群青の光の中で、その白は

 まるでふたりの間に残された“理解の空白”のように、

 静かに息づいていた。

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