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夕陽が沈みかけ、窓の外の光がゆっくりと群青に変わっていく。
美術室の中は、橙と青が混ざるあいまいな色に包まれていた。
透が筆を置き、静かに言う。
> 「……仕上げ、明日にしようか」
奏は短くうなずくだけで、視線を合わせなかった。
その横顔に、言葉の行き場を失った沈黙が漂う。
透は片づけかけた画材を手に取り、
振り返らずに扉へ向かう。
扉が閉まる音が、静かな余韻を残して消えた。
机の上には、一枚のポスターだけが取り残されている。
中央に書かれた題字――「交わり」。
そのすぐ下に、まだ塗り残された白い余白があった。
群青の光の中で、その白は
まるでふたりの間に残された“理解の空白”のように、
静かに息づいていた。




