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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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5

透はふと、机の上のポスターに視線を落とした。

 その一角――淡いグラデーションの途中で、筆が止まったままの白い余白が残っている。


 夕陽がそれを照らし、わずかに橙と白の境界を滲ませていた。

 まるで、ふたりの距離のように。

 近いのに、重ならない。


 奏が筆を置き、静かに片付けを始める。

 透は声をかけようとして、唇を開きかけたが――言葉が出なかった。

 ただ、その未完成の余白を見つめる。


 (この白は、いつ埋まるんだろう)


 扇風機の風がポスターの端をめくり上げ、

 その白が、一瞬だけ揺らめいた。

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