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透はふと、机の上のポスターに視線を落とした。
その一角――淡いグラデーションの途中で、筆が止まったままの白い余白が残っている。
夕陽がそれを照らし、わずかに橙と白の境界を滲ませていた。
まるで、ふたりの距離のように。
近いのに、重ならない。
奏が筆を置き、静かに片付けを始める。
透は声をかけようとして、唇を開きかけたが――言葉が出なかった。
ただ、その未完成の余白を見つめる。
(この白は、いつ埋まるんだろう)
扇風機の風がポスターの端をめくり上げ、
その白が、一瞬だけ揺らめいた。




