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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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3

透は少し考えるように眉を寄せ、言葉を選んだ。

 「意見、聞くだけでもよくない?」


 その声は柔らかい――けれど、どこか慎重すぎた。

 奏は筆先を止めたまま、紙面を見つめている。

 わずかな沈黙ののち、静かに答えた。


 「……言われなくても、やってるよ」


 短い言葉。

 だがその奥には、かすかな防衛の色が混じっていた。


 次の瞬間、室内の空気がすっと変わる。

 扇風機の羽音が、取り残されたように低く回り続ける。

 透はその音を聞きながら、目を伏せてゆっくりと息を吐いた。


 「うん、そうだね。……ただ、もう少し“余白”があってもいいかなって」


 奏は返さなかった。

 ただ、ポスターの端を押さえ、定規を滑らせる。

 紙の上に走る鉛筆の線が、沈黙を切り裂くように響いた。

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