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奏は、机いっぱいに広げたポスター案の前で、真剣な表情のまま定規を動かしていた。
丁寧に線を確かめ、余白のバランスを整え、端の文字を少しずつ整列させていく。
その少し後ろで、透が椅子に腰をかけ、メモ帳に鉛筆を走らせていた。
視線はポスターの中央――「交わり」というテーマの文字へ。
少しの沈黙のあと、彼はためらいがちに口を開いた。
「……ここ、文字の角度を少し変えたら、もっと柔らかい印象になるかも」
奏が顔を上げる。
「え?」
透は指先で空中にラインを描くようにして続ける。
「このあたり。テーマの“交わり”が、もう少し“感じ”で伝わるかなって」
奏は一瞬だけ考え込む。
けれどすぐに、定規を握り直しながら小さく首を振った。
「それじゃ締まらない。決まった通りにやろう」
透は、笑みを浮かべようとして――少しだけ、そのまま言葉を失った。
夏の夕陽が、二人の間のポスターの上でゆっくりと色を変えていく。




