表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/94

5

透は、崩れた紙束を整え終えると、

しばらく何かを言いかけるように口を開きかけ――

結局、言葉を飲み込んだ。


静かに椅子を引いて立ち上がる。

その動作すら、教室の静寂に溶けていく。


「無理しないで。明日もあるんだから」


穏やかに告げたその声が、

どこか遠くから聞こえてくるように感じた。


透は扉の前で一度だけ振り返り、

視線で何かを確かめるように奏を見つめ――

何も言わず、廊下の光の中へ出ていった。


残された教室には、

夕暮れと夜のあわいの色が静かに広がっている。


奏は机に両肘をつき、

目の前のプリントをただ見つめた。


赤ペンが止まったままの行。

未記入の欄が、息を潜めて並んでいる。


奏(心の声):

「“頼る”って、どうやってやるんだろう」


そのつぶやきは、誰にも届かないまま、

扇風機の回転音にかき消されていった。


積み重なった紙の山。

それはまるで――

言葉にできなかった思考のかたまりのように、

机の上で静かに息をしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ