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机の上に積まれた紙束が、
ふいに小さな音を立てて崩れた。
一枚のプリントが、ゆっくりと宙を滑って床に落ちる。
白い紙が夕方の光を受け、淡く反射した。
透が反射的に身をかがめる。
だが、その動きより早く――
奏が慌てて手を伸ばした。
指先が、紙の端でふと触れ合う。
ほんの一瞬。
けれど、その瞬間に流れた空気は、
まるでどちらかの呼吸を奪うように静まり返った。
奏は小さく息を呑み、
落ちたプリントを胸の前で抱え直す。
その動作に、どこか防御の色がにじむ。
奏(心の声):
「触れられるより――
見透かされるほうが、苦しい。」
透は何も言わず、指先をそっと引いた。
教室の奥で、扇風機の羽音だけが回り続けていた。




