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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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3

教室の空気が、ゆっくりと夕暮れに溶けていった。


 黒板の「展示+カフェ」という白い文字が、傾いた西日の中で淡くにじむ。

 チョークの粉が光を受けて宙に漂い、風のない教室に小さな粒子のきらめきを残している。


 奏は、配られた企画書を両手で持ち、真剣な表情で何度も目を走らせていた。

 ページをめくるたびに、紙がかすかに擦れる音がする。

 「リーダー」という言葉が胸の奥で静かに重く響いていた。


 一方、透は椅子の背にもたれ、軽く腕を組みながら窓の外を眺めている。

 風が止まり、扇風機の回転音だけが教室を満たしていた。

 その一定のリズムが、まるで夏の始まりを告げる心臓の鼓動のように続いている。


 ふと、透が目線を横に向ける。

 奏の髪が光を透かし、チョークの白さと混ざって淡く揺れているのが見えた。

 その姿を見て、透は小さく息を吐く。

 ――たぶん、また一人で抱え込むんだろうな。


 夕陽がさらに傾き、黒板の文字の影が床に長く伸びていく。

 「展示」と「カフェ」。

 見せることと、交わること。

 そのふたつの言葉が、まるでこれから始まる二人の関係を予感させるように、

 光と影のあいだで静かに溶け合っていた。

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