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教室のざわめきの中、誰かが軽く手を叩いた。
「おーい、真面目ペア誕生だな!」
冗談めかした成瀬の声に、周りの生徒たちがどっと笑う。
「これは安泰だぞ」「間違いなく進行完璧」――
あちこちからひそひそ声が飛び交う。
笑い声が混ざり合って、教室の空気が一気に柔らかくなる。
透は苦笑しながら、軽く肩をすくめた。
「期待されてるね」
奏もそれに合わせるように、小さく笑みを作る。
けれど、その笑顔にはほんの少しの“硬さ”があった。
「……そうだと、いいけど」
――笑いの中に、微かな温度差があった。
透には気づけないほどの、わずかな違い。
彼にとっては“場を和ませる笑い”でも、
奏にとっては“背筋を伸ばさせる笑い”だった。
夕陽が窓の外で少しずつ傾き、
黒板の「展示+カフェ」という文字が赤く染まる。
その光の中で、二人の笑顔はどこか“ずれたリズム”のまま、
静かに並んでいた。




