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2.出会い:坂の途中の再会
透は段ボールを抱えた奏の背中を見つめながら、数歩だけ駆け足で坂を下った。
夕陽が坂道のアスファルトを金色に染め、その中で二人の影がゆっくりと重なる。
> 「藤原さん、それ重そう」
声をかけると、奏が振り返る。驚いたように目を瞬かせ、次の瞬間には少しぎこちなく笑った。
透は息を整えながら、軽く手を差し出す。
> 「持つよ」
その手を見て、奏は一瞬だけ迷うように視線を落とした。
けれど、すぐに小さく首を振る。
> 「大丈夫。すぐそこだから」
> 「……こういうの、自分でやった方が落ち着くの」
透はその言葉に、苦笑いを浮かべる。
彼女の頑なさは、どこか見慣れたものだった。自分の中にもある、静かな意地のように。
> 「そういうとこ、頑固だね」
その一言に、奏の眉がわずかに動く。
むっとしたような、でもどこか照れたような表情。
風がふたりの間を抜け、段ボールの隙間で紙がかさりと鳴った。
> 「……誰かに頼ると、迷惑かける気がして」
奏の声は小さかった。
その音が、夕暮れの色に溶けていく。




