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4.初めての“自然な笑い”
奏は笑いながら、指先で目元を押さえた。
笑いすぎたわけじゃない。
けれど――胸の奥で、何かが小さく弾んだ。
> (あ、ちゃんと“通じた”……)
これまで透の言葉はどこか遠くて、掴みきれなかった。
でも今は、同じタイミングで笑えた。
同じ景色を見て、同じリズムで息をしている。
それだけのことが、思いのほか温かかった。
透も、そんな彼女の表情をじっと見つめていた。
光の少ない図書室で、奏の頬に柔らかな明かりが差す。
その笑顔が、雨音の中でほんのり浮かび上がる。
> (……また、この笑い声が聞きたい)
透はそう思った。
自分の中に生まれた小さな願いが、雨の音に紛れて消えないまま、
二人のあいだに静かに残った。




