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3.会話:弟の話
透が手にしていた本を閉じ、少し首を傾けた。
> 「絵本?」
奏は、両腕に数冊の本を抱えたまま、照れくさそうに笑う。
> 「うん。弟に読もうと思って。最近、“寝る前に読んで”って言われるんだけど……」
言いかけて、ほんの少し頬をゆるめた。
> 「“お姉ちゃんの話、長い”って怒られたの」
透はその言葉に、ふっと肩を揺らす。
> 「……それ、僕も言われる」
奏が瞬きをして、首を傾げる。
> 「え?」
> 「弟じゃなくて、友達に。“説明長い”って」
その瞬間、奏が小さく吹き出した。
静かな図書室に、短い笑い声が弾けて、すぐに雨音に溶けていく。
雨が窓を叩く音と、二人の笑いがほんの一瞬だけ重なった。
まるで、外の世界の時間がそこだけ緩んだように。




